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The development of postural adjustments during reaching in 6- to 18-month-old infants

Van der Fits, I. B. M., et al. "The development of postural adjustments during reaching in 6-to 18-month-old infants evidence for two transitions." Experimental Brain Research 126.4 (1999): 517-528.

【要旨】

本研究は健康な乳児においてリーチング運動に伴う姿勢調節の発達的変化について焦点を当てている.私たちは6-18カ月の10人の縦断的研究を行った.各セッションでは2つのポジション(乳児椅子における「直立座位(upright sitting)」とサポートのない「長(long-leg)」座位)で右手のリーチング運動を行い,そのあいだ身体右側の上肢,頸部,体幹,そして下肢筋群を多チャンネル表面筋電図で記録した.同時に,全てのセッションはビデオにて記録した.比較データは3-5カ月時点の同じ乳児から出されている.加えて,18人の乳児(8-15カ月)で同様のリーチング課題を評価したが,これらの乳児は身体両側の体幹と頸部の筋群で表面筋電図をとった.

私たちのデータで姿勢調節の発達において2つの移行(transition)があることが明らかとなった.最初の移行は6カ月前後にある.この時期,姿勢筋群はリーチング運動の間まれにしか活動的とならない.8カ月になると十分な姿勢活動が再現され,乳児は上肢の運動速度やリーチング運動を開始した座位姿勢のように課題特異的な制約に姿勢調節を適応させる能力を発達させた.

2つ目の移行は12-15カ月に起こる.15カ月より前では乳児は一貫した予期的な姿勢活動を示さなかったが,15カ月以降,とりわけ頸部筋群にはそれが見られた.


【私見】

本文に書かれていますが、姿勢活動はいったん4カ月の時点で十分に発揮されるんですね.6カ月の時点でその活動が見られなくなり,8カ月の時点で再び強くなるから「8カ月になると十分な姿勢活動が再現され」という表現になります。こんなところにも発達のU字現象が見られるのは興味深いです。著者は視覚や平衡感覚の発達と絡めてこの現象を説明しようとしています。視覚・平衡感覚の発達により6カ月児は体性感覚による画一的な姿勢活動からいったん解放され,より複雑なパターンで課題・状況特異的に姿勢活動ができるようになるのが8カ月,ということでしょうか.

もう1つ,座位での予期的な姿勢活動が15カ月以降で起こるという点は非常に興味深いものがあります.ちなみに,座位はおおよそ8カ月以降で手の支持なしで安定しますが,本研究ではこれと予期的な姿勢活動との相関はありませんでした.本文に記載されていますが、この時期は乳児が独立位と歩行を獲得する時期でもあり,それらと座位での予期的な姿勢活動との相関が見られました.座位での予期的な姿勢活動が独立位・歩行と関連する.言い換えれば,独立位・歩行の獲得が安定した座位には必要と言えるのではないでしょうか?臨床を考えてみると,座位が十分に安定してから立位の練習,ではなく,座位の安定のために立位を取り入れるという選択のエビデンスにこの論文はなるのではないでしょうか?

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