じいちゃんとの別れと受け取った形見
高校を卒業し、東京に上京する少し前の話です。
いつも寡黙なじいちゃんから、突然部屋に呼び出されたことがありました。
1.じいちゃんの形見
まさひろ、ちょっと話がある。
じいちゃんに突然、呼び出されたことがありました。
僕からじいちゃんに話しかけることはありますが、じいちゃんから話しかけられることは珍しい。
何か重大なことかもしれないと察しました。
これをお前に預ける。
じいちゃんから渡された箱を開けると、中に入っていたものは金の懐中時計。
よく見てみると、内閣総理大臣から戦争へ参加したじいちゃんへ送られたものでした。
「えっ!なんで僕に?」
大切なものなら普通、息子である父さんに渡すもの。
なんで孫である僕に渡すのだろうと思いましたが、じいちゃんが僕に渡すと決めていたので、黙って受け取りました。
2.20歳のころに
僕は映画の専門学校を卒業し、生活のため居酒屋でフリーターとしてアルバイトをする日々を送っていました。
そんな中、母親から一通のメールが届きました。
じいちゃんが倒れた。
それは突然の一報でした。
その数ヶ月前に帰省した時は、じいちゃんは80歳を越えていたけど、元気に歩いていたのに。
アルバイト中でした動揺が隠しきれず、涙しながら店長に事情を説明し、急遽帰省させてもらうことにしました。
実家に帰ってすぐに、家族と車で近くの病院へ。
病院に到着すると、たくさんの管に繋がれた、弱ったじいちゃんがいました。
あんなに元気だったじいちゃんが、こんなに衰退するなんて、信じられませんでした。
どう接していいか分からない状態でいると、父親がじいちゃんの耳元で僕が来たことを伝えると、じいちゃんが僕に向かって手を出してきました。
僕も手を出して握手をしたときに、これが最期だと察し、この握手でじいちゃんの想いを託されたような重みを感じました。
3.数日後
東京へ戻ってから数日後、母親からのメールで、じいちゃんが亡くなったことが告げられました。
急いで帰省し、告別式へ。
棺桶に入ったじいちゃんは、まるで生きているように見え、亡くなった実感がありませんでした。
でも、こないだまで元気だったじいちゃんの突然の死を目の当たりにして、人の人生に終わりがあることを感じました。
これが僕にとって初めての、人の死を直近で見た出来事でした。
まとめ
じいちゃんは、誰からも信頼されている人望が厚い人でした。
じいちゃんには、もっと東京で活躍する姿を見せたかった想いがありました。
だらだら過ごしてしまった日々を悔いましたが、後悔してももう遅い。
実家を離れ一人暮らしていると、一人で生きているような気持ちになりますが、大切な家族も年を重ねていきます。
親孝行したいと思っているなら、親孝行できる期間が限られていることを、知っておくことが大事。
じいちゃんからもらった形見である金時計を大事にし、天国で見守ってくれているじいちゃんに誇れる行いをしようと誓った出来事でした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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