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冒険の遺伝子

本記事は2008年1月26日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。

数年前、僕たち家族は「冒険の遺伝子」についてのDNA(デオキシリボ核酸)検査を受けた。冒険の遺伝子とは、ある特殊な遺伝子が人々を危険な行動に駆り立てると言うものだった。
それを僕達、三浦家は持っているのではないかと科学者たちは思ったのだろう。最近ではそんなものまで調べられるのかと驚いたものだ。

父の三浦雄一郎は冒険スキーヤーだ。エベレストを初めて滑った男として知られ、その後世界の7大陸の最高峰の山を滑り降り、今年もまた齢75歳にしてチョモランマの頂上を目指している。父がチョモランマに登ろうと思ったのは単純なきっかけだ。
2003年、ネパール側からのエベレスト(チョモランマと同義)登頂時に、せっかく登ったのにあたりが雲で覆われ、地球最高位からの景色が見られなかったからだ。

この時のエベレストは大変な遠征だった。偏西風が降りてきていつまでも強風がやまず、デスゾーンと呼ばれる8000㍍以上の箇所に4日間も滞在を余儀なくされた。なんともひどい目にあったのに下山直後にまた登る話をしているのだから、僕じゃなくても父は冒険の遺伝子を持っているのではないかと疑ってしまう。

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