遠征装備、慎重に点検
本記事は2008年2月16日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。
凍てつくような空気が酸素マスクとゴーグルの間の頬を刺す。ピッケルをつく動作とステップをリズムよく動かしながら、なるべく効率よく登ろうとするが足元の雪は新しくもろい。表面はクラスト状になっていて慎重に足を出さなければ容易に踏み抜いてしまう。
視界はゴーグル越しに自分のヘッドライトが放つ光の輪の範囲だけ。上を見上げると雪の壁は星空まで続いているようだ。ここはチョモランマ…ではなく札幌のテイネハイランドスキー場だ。
遠征1ヶ月を控えた今、僕は父の雄一郎、遠征メンバーの五十嵐和也と一緒に、遠征に持っていく装備を装着して、ナイター照明が消えた後のテイネハイランドスキー場の男女回転バーンを登ることにした。
チョモランマの頂上は地上の空気の3分の1、そして8848㍍、成層圏に近いこの高度の平均気温は-40℃だ。そのため装備品は暖かく動きやすく、軽量であることが望ましい。
ウェアには3つの機能が求められる。外気を遮断する、中に空気の層を作る、保温・速乾性を持つ、だ。体温で暖められた空気はとても高い保温効果がありその熱をいかに逃さないかを考える。そのためアウターウェア、ミドルウェア、下着などはそれぞれその目的合ったものを選ぶ。僕が特に気を使うのが下着だ。汗は空気の25倍の速さで熱を奪うためいかに速乾性と保温性を保つかが低温での死活問題となる。
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