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生命と酸素の付き合い

2009年6月20日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。

 昨年のエベレスト、標高8200㍍地点。焼けつく肺にいくら大気を吸い込んでも僕の意識は遠のいていく一方だった。酸素を吸収しようと多くの血液が流れ込んでいるが、それが仇となり、血液が肺胞内へにじみ出てくる。こうなると肺の呼吸能力が著しく落ちてしまい、地上にいながらおぼれているような状態になる。
 僕は必死でボンベの酸素量を増やした。降りる判断が早かったこと、持参した薬が効いたことが幸いして事なきを得たが、酸素のありがたみと、それがなくなったときの恐怖をまざまざと感じた瞬間だった。

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