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富士山の歴史・文化再考

2009年7月18日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。

 鬱蒼と茂る森、鳥の鳴き声、神社の鳥居や石造り、朽ち果てた茶屋の廃屋は自然の風景の一部に溶け込んでいる。3合目の風景は僕が知っている殺伐とした木も生えない富士山のイメージとはかけ離れていた。

 富士山は年間30万人が登る人気の山だ。安全に登ってもらうため、僕たちの低酸素室でも「富士山講習会」を開いている。しかし僕自身、実はつい先日まで富士山を1合目から登った事が無かった。
 僕にとっての富士山とは、ヒマラヤ登山に備えるトレーニングの一環だった。ヒマラヤのような超高所へ出かける前には、体を"高所順化“させなければならない。標高3776㍍を誇る富士山は日本では最適の場所だ。いつもは5合目まで車で行き、そこから山頂を目指していた。
 1合目からから登ることにしたのは、富士山を紹介するテレビ番組に出演したのがきっかけだった。富士山の歴史や文化は1合目から5合目に凝縮されているという。僕は宿題を忘れた子供のように、改めて裾野から富士山を眺めてみたいと思った。

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