【演劇王子語録】演じることを、本当に楽しめていますか?
──────────────♛──
演じることが楽しいって、
当たり前じゃないの?
─────────────────
しん:三浦さん、役者の方々に「演じることの楽しさ」をお話しされることが多いですね。あれってなぜですか?
みうらさん:あーそれは役者さんと関わる上で、僕が最も大事にしている点だからだね。
しん:本当にいつも稽古のたびに言っている気がします(笑)
ぼくは役者でもないただのエンタメを愛する消費者で、作り手側の気持ちがつかめていないのですごい素人質問だと思うんですけど、演じることを楽しむってそんなに難しいことなんですか?
みうらさん:うーん、もちろん現場によって違うんだけど、人によってはかなり感性によったご指導をされる人が多いから、演出家の対応に心痛めて精神病んじゃう人とか見て、「もっとお芝居ってすげー楽しいはずなのにこんなことでダメになるのは残念だなー」って昔から思っていたんだ。
しん:確かに、演技って正解がないというか、こうやれば100点っていうのがない世界ですよね。感性によったご指導というのは、「ちがうよ!なんでわかんないんだよ!」みたいな感じですか?
みうらさん:いやほんとにそう!(笑)
そういう風に指導された時って、自分のどこを直せばいいのか、っていう自己否定を延々とやっちゃうんだ。で、心を痛めてしまう。
しん:自分にも思い当たる節がありますね。確かに、何を直せばいいのかわからないときが一番辛いです…
みうらさん:でしょ?(笑)
ただ、心を痛めた人に「強くなれ」っていうより「演出家サイドにも直せるところがある」って思っていたところがあって、「演出家がもうちょっとこの人がやってることを見てあげられればいいのに。この人面白いのになぁ…」みたいなことを思うんだよ。
例えば、ここの現場ではボロクソ言われてた人が別の現場に行った時にめちゃくちゃ褒められて超輝いてる姿とかを何度も見てきてて。
だから心を痛めちゃった人を見てると、「この現場が世界の全て」と思って落ち込んじゃって、もうお芝居嫌だ…みたいになっちゃうんだけど、別に「他の現場行けば、あなたはすげー喜ばれるのに…」って思うと、こっちの心が痛くてね.
これから芝居をやろうとしている人、既にやっている人にも「あなたは最高だ」ってことと
「お芝居は楽しい」っていう2つのことを心から伝えたい。
これはプロの俳優さんであろうが社会人で楽しみながら演技したい人であろうが、どこでやってたとしても、このスタンスは変わってないんだよ。
───♛─────────────
”カッコよく見せたい” だと
たどり着けない
─────────────────
しん:演じることをありのままに楽しむって難しいんですね。三浦さんが演じることの楽しさに気づくのって、どういういきさつがあったんですか?
みうらさん:…うーん、すごい不器用だから分からないことがめちゃくちゃ多くて、いろんな所に躓いていたね。。。ただ「演じることが辛いか?」と聞かれたら、答えとしては、「そりゃまあ、ずっと辛いけど同時に楽しくもありましたよ」という。
しん:ずっと辛いけど楽しい、ですか?
みうらさん:そうだね。「演じてて楽しいな」と思えた時から色々見えてきたところはあって、演技を学び始めた大学生の当初は、「自分をカッコよく見せたい」とか「売れたい」とか思ってるだけで、お芝居の楽しさとかもよく分かってなくて。
芝居も上手くもならず大学2年ぐらいまで続いてたんだ。だけど、大学3年の時にすごい挫折があってさ、学内オーディションで、一言しかない役をもらってしまって…。
しん:えっ、一言!
みうらさん:そう、たった一言(笑)
しかも、僕より芝居が下手だと思ってた人たちが全員僕より役が沢山ついてて、「納得出来ないな」みたいな…
舞台の上でずっとトコトコ太鼓叩きながら他の人で活躍してるの見てなきゃいけなくてさ。キツいよね。
しん:それは凹みますね。
みうらさん:オーディションした先生も贔屓とかなくて、すごい厳格な基準があってさ。
「歌が歌えるか?踊りが踊れるか?セリフがしゃべるか?この三つの基準からいきます!この三つの基準に満たしてない人は役がどんどん減ります!」って言われて。
当時の僕は「自分では出来ている」と思っていたけど、客観的に見たら全部できなかったんだよね。外見がシュッとしてたから、いい役をそれまで結構もらってて、自分的に「ちょっとイケてるぜ」って思ってたりしてたのよ(笑)
しん:三浦さんにもそういう時ってあるんですね(笑)
みうらさん:そういう時ってどういうときよ!(笑)
でも若い時は誰でもあるんじゃないかな。
まあそんなこともあって「僕はマジで芝居下手くそなんだなー」って思って、そこから気持ちを入れ替えていったんだ。
しん:気持ちの切り替えとは具体的にはどんなことをされたんですか?
みうらさん:例えば、自分は大学3年なのに1年生の授業とかを受けさせてもらったり、あとダンスも下手くそなんだけど、一番前の方に行って踊るようにしてみたんだ。全然踊れてないんだけど一生懸命やってたら、心の中で「なんだアイツ全然芝居上手くない」って思った人が、すごく優しくダンス教えてくれたりしたんですよ。
今までその人に抱いていた負の感情を反省して「マジで申し訳なかったな」って思って、自分の中の周りに対するイキリみたいなトゲが少しずつ抜けていったんだ。
しん:三浦さんのお芝居に対する気持ちの変化や一生懸命さに周りも心を動かされたりしたんでしょうね。
みうらさん:そうかもしれないね。そうやってがむしゃらにやってるうちに、
「役の人物の気持ち」とか、「相手役と会話するということ」がだんだん分かるようになってきた。「なるほどそういうことか」みたいな…
その後また蜷川さんにボロボロにされたりとか色々あるんだけど…(笑)
感情なくて、かっこつけてるうわべだけだった自分が、がむしゃらにお芝居のレッスンやりながら人の気持ちに触れて、一個一個の経験値をレンガのように積み上げていったらロボットから人間になっていった…みたいな。
かっこつけてた時は、感情がおかしくて、イライラばっかりしてたし 自分中心に考えちゃってたんだけど、地道に直向きにお芝居やっていく過程で、人と繋がったり、話したりとかしていく作業が自分の中ですごい楽しかったんだよね。
しん:なんというか、自分の中での対話があったんですね。
みうらさん:そうそうそう…
こういうめちゃくちゃ不器用な時期があって、人が躓かないようなところに一個一個躓いていたからこそ、ありがたいことに「教えるのが上手い」とか、言ってもらうことが多くなって、自分でもすごい大事な経験だったんだなとは思うよ。
だからこそ最初の話に戻るけど、役者さんが悩んでいる点もすごい共感できるし、演出するときも、なんか本当に精神的に追い込んでその人たちを亡き者にするみたいなことは基本的に選択肢に入ってなくて。
しん:確かに、三浦演劇部の稽古を見てても、役者さんがどういう意図をもって表現しているのか、こうしたらもっといいんじゃないか、というようなお話を良くされてますね。
みうらさん:そうね。だからこちらからの一方的な指導というよりも、なんて言うんだろう、、、方向性を伝えながらも、その役者さんのことを汲み取る。
役者さんと並走しながら、問題解決を図っていくのを常に意識してるという感じかな。
(続く・・・)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?