2023年12月25日、公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの報告が公表されました。本noteは前編として、公開買付制度のあり方について、同報告の要点をまとめました(後編については「ポイント解説・金商法 #14」をご参照ください。)。
提言において記載された内容は、後編も含めて、2024年通常国会に提出されるであろう金融商品取引法の改正案、改正の成立後の同法施行令・内閣府令・Q&A等の改正案により反映されることになるため、今後の改正動向については注視が必要であり、今後も、適時のタイミングで解説記事を配信する予定です。
1. 欧州型の規制への移行
欧州型の公開買付制度(*1)については、一般株主の保護に手厚い等制度のあり方として望ましいとの意見が多く見られる一方、健全なM&Aを阻害しないよう例外を柔軟に認めるための体制や関連制度の整備が必要との意見も見られたことから、直ちに欧州型の規制に移行すべきとの結論には至らなかったものの、将来的な移行の可能性は念頭に置きつつ、下記の各検討課題について個別に検討することとなりました。
2. 市場内取引の取扱い
(1)3分の1ルールにおける取扱い
(2)閾値間の取引の取扱い
(3)「急速な買付け等」の規制
3. 強圧性の問題を巡る対応
4. 3分の1ルールの閾値
5. 金融商品取引業者等による顧客からの買付け等
6. 公開買付制度の柔軟化・運用体制
7. 公開買付けの予告
8. その他の課題
9. 今後の課題
公開買付けに関する事前・事後の救済制度として、対象会社やその株主に法令違反または著しく不公正な方法による公開買付けを差し止める権利を付与する制度(事前の救済制度)や、公開買付制度に違反して取得した株式について議決権を停止する制度や売却命令を賦課する制度(事後の救済制度)の導入が検討されました。
これらの救済制度については、直ちに導入すべきとの結論には至らなかったものの、必要に応じて引き続き検討を重ねていくことが考えられるとされています。
また、現行の公開買付制度上も、公開買付制度の違反については、当局による訂正命令の発出や緊急差止命令の申し立てといった手法による是正措置が設けられており、当局においてはこれらの手法を適切に活用していくことが期待されています。
Authors
弁護士 後藤 徹也(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2011年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2012年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。ニューヨーク州弁護士、一種証券外務員資格・内部管理責任者資格。21年8月から現職。
『ポイント解説 実務担当者のための金融商品取引法〔第2版〕』(商事法務、2022年〔共著〕)、『会社訴訟・紛争実務の基礎-ケースで学ぶ実務対応』(有斐閣、2017年〔共著〕)、『公開買付けの理論と実務〔第3版〕』(商事法務、2016年〔共著〕)、『アドバンス会社法』(商事法務、2016年〔執筆協力〕)等、著書・論文多数。
弁護士 豊島 諒(三浦法律事務所 アソシエイト)
PROFILE:2018年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2020年慶應義塾大学法科大学院修了、2022年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2022年4月から現職。企業買収・公開買付けといったM&A案件を中心に、企業法務全般を広く取り扱う。
弁護士 峯岸 健太郎(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2001年一橋大学法学部卒業、2002年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)、一種証券外務員資格。19年1月から現職。06年から07年にかけては金融庁総務企画局企業開示課(現 企画市場局企業開示課)に出向(専門官)し、金融商品取引法制の企画立案に従事。
『ポイント解説実務担当者のための金融商品取引法〔第2版〕』(商事法務、2022年〔共著〕)、『実務問答金商法』(商事法務、2022年〔共著〕)、『金融商品取引法コンメンタール1―定義・開示制度〔第2版〕』(商事法務、2018年〔共著〕)、『一問一答金融商品取引法〔改訂版〕』(商事法務、2008年〔共著〕)等、著書・論文多数。