ベトナム最新法令UPDATE Vol.5:ベトナムの電子インボイスに関する通達(2022年7月1日より施行)
ベトナムでは、2019年9月に制定されたDecree No. 119/2018/ND-CP(以下「政令119号」といいます)が施行されるまでは、取引を行う際に紙インボイスと電子インボイスが併用されてきました。政令119号によって、これまでの紙インボイスの使用は許容されなくなり、電子インボイスの使用が義務付けられることになりました(同政令35条)。
政令119号では、2020年11月1日までに、全てのインボイスを電子化することが義務付けられていました。しかし、2020年10月時点で事業者の対応が追い付いていないことを受けて、2020年10月にインボイス・証憑に関する政令 Decree No. 123/2020/ND-CP(以下「政令123号」)が公布され、電子インボイスの強制適用開始時期を2022年7月1日に延長することが発表されました。
また、2021年9月には政令123号 の一部条項のガイドラインとして、通達No. 78/2021/TT-BTC(以下「通達78号」といいます)が公布されました。通達78号は2022年7月1日から施行されています。
通達78号では、電子インボイスの具体的な運用方法に関する詳細な内容が規定されています。
1. 対応期限
サービスや物の売買を行う法人および個人は2022年7月1日から電子インボイスを使用しなければならないことが改めて示されています(通達78号 11条2項)。
2. 電子インボイスの作成を第三者に委託する場合
電子インボイスは企業が自ら作成することも可能です。もっとも、自社で電子インボイスを作成することが難しい場合には、業者に対して電子インボイスの作成を委託することも可能です。通達78号では、電子インボイス作成を業者に委託する場合に関して①委託契約書に記載すべき事項、②委託により作成された電子インボイスに含まれるべき内容、③委託の手続などが定められています。
3. 電子インボイスに付与する認証コードについて
ベトナムでは、VATの申告に際して企業が発行したインボイスを税務当局に提出する必要があります。もっとも、電子インボイスを発行する際に税務当局の認証コードを付与すれば、電子インボイスに関する情報が税務当局に自動的に共有され、企業がマニュアルでインボイスを当局に提出する必要はなくなります。
電子インボイスは認証コードを付与する形で発行することも、認証コードを付与せずに発行することも可能です。しかし、税務リスクが高いとされる企業や10人以上の従業員を雇用し、会計帳簿を有している企業は、税務コードが付された電子インボイスを作成することが義務付けられます。
通達78号では、現在税務当局の認証コードを付与しない形で電子インボイスを発行している企業が今後税務当局の認証コ―ドを付与する形で電子インボイスの発行を開始するための方法が定められています(通達78号5条)。
4. その他
通達78号では電子インボイスに関し、以下のような内容が規定されています(通達78号4条、7条、8条)。
上記の通り、2022年7月からの電子インボイスの義務化に伴いベトナムに現地法人をお持ちの皆さまにおかれましては、ベトナム現地法人において適切に電子インボイスを作成する体制が構築されているかにつき確認する必要があります。
Author
弁護士 井上 諒一(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2014年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2015~2020年3月森・濱田松本法律事務所。2017年同事務所北京オフィスに駐在。2018~2020年3月同事務所ジャカルタデスクに常駐。2020年4月に三浦法律事務所参画。2021年1月から現職。英語のほか、インドネシア語と中国語が堪能。主要著書に『オムニバス法対応 インドネシアビジネス法務ガイド』(中央経済社、2022年)など
渡邉 雄太(M&Pアジア株式会社 CFO)
PROFILE:国内大手海運会社である日本郵船株式会社にて総合商社等とのJV設立・運営を通じた海洋事業開発に従事。その後、本社財務部で1年半勤務後、イギリス、オランダに約3年間駐在。キャリアを通じ、世界各国の会計、税務、法務を担当。国際会計、国際税務に詳しい。著書に『オムニバス法対応 インドネシアビジネス法務ガイド』(中央経済社、2022年)