2024年5月15日、「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」が成立し、同月22日に公布されました(以下「本改正法」といいます。)。本改正法は、公開買付制度及び大量保有報告制度の一部改正を含むところ、これは2023年12月25日に公表された「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ報告」(以下「WG報告」といいます。)における検討及び提言を踏まえたものとなります。
本noteでは、本改正法のうち、公開買付制度及び大量保有報告制度の改正に焦点を当て、WG報告での検討内容を踏まえた本改正法のポイントをまとめました。
1. 公開買付制度の改正
(1) 市場内取引への公開買付規制の適用
(2)3分の1ルールから30%ルールへ
(3)「急速な買付け等」の規制廃止
(4) 他者の公開買付期間中の買付けルールの廃止
(5) 5%ルールの新たな適用除外(政令により規定予定)
(6)公開買付説明書の記載の簡素化
2. 大量保有報告制度の改正
(1)共同保有者の範囲の限定
(2)現金決済型デリバティブ取引への提出義務の拡大
3. 今後の見通し
本改正法の施行期日は、原則として、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされておりますが(本改正法附則1条本文)、本noteで取り上げた公開買付制度及び大量保有報告制度に関する事項は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされております(本改正法附則1条3号)。
今後、本改正法の施行に向けて同法施行令・内閣府令事項が検討され、改正案が公表・パブリックコメントに付されると思われるところ、その動向については注視が必要となります。
Authors
弁護士 後藤 徹也(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2011年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2012年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。ニューヨーク州弁護士、一種証券外務員資格・内部管理責任者資格。21年8月から現職。
『ポイント解説 実務担当者のための金融商品取引法〔第2版〕』(商事法務、2022年〔共著〕)、『会社訴訟・紛争実務の基礎-ケースで学ぶ実務対応』(有斐閣、2017年〔共著〕)、『公開買付けの理論と実務〔第3版〕』(商事法務、2016年〔共著〕)、『アドバンス会社法』(商事法務、2016年〔執筆協力〕)等、著書・論文多数。
弁護士 豊島 諒(三浦法律事務所 アソシエイト)
PROFILE:2018年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2020年慶應義塾大学法科大学院修了、2022年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2022年4月から現職。企業買収・公開買付けといったM&A案件を中心に、企業法務全般を広く取り扱う。