登り窯のある中学校
大森町の隣町、水上町(正式には「みなかみちょう」だが通称「みずかみ」)にある大田市立第三中学校(以下:三中)は、大森町を含む地元の子どもたちが通う中学校である。
現在全校生徒12人ほどの小さな学校だが、部員一人ひとりが何役もこなす吹奏楽部が有名で、何度もテレビなどメディアで取り上げられている。ちょっと古い映像だがこちらをぜひご覧あれ。ぱっぱっと楽器を持ちかえて演奏する様子は圧巻!!
吹奏楽部の他にもう一つすごいのは、校内に登り窯があること。
もともと水上町は日本三大瓦の一つ「石州瓦」の産地。今こそ工場生産に切り替わってはいるが、昔はそこかしこに瓦を焼くための登り窯があったという。それにちなんで、三中では60年以上にわたって窯芸の授業があり、窯の火入れの時などは生徒も泊まりがけで火の番をするなど本格的な焼き物づくりを行っている。
ここでしかできない、地域の特色ある教育が半世紀以上も根付いているなんてすばらしい。すごすぎる。
一般市民向けにも毎年窯芸教室が催されており、三浦もいつか行きたいなと思っていた。しかしこれがなかなかの人気で、すぐに定員が埋まってしまう。
それが今年はワイフが地元のまちづくりセンターで働き始めたおかげで情報がいち早く入り、定員に達する前に予約することができた。とてもうれしかった。
教室は6月下旬に初回があり、各々、粘土を自由に成形して好きなものをつくった(何点つくってもいい!)。三浦は魚を盛り付けるためのお皿を中心にこんなようなものをつくった。
そしてそれらを素焼きしてもらい、9月はじめごろに再び釉薬を塗りに三中へ。いよいよ翌週には本焼きをするというので窯焚きの様子を見に行こうと思っているうちになんだか忙しくなり、気づけば日にちが過ぎていた。若干後悔。
メインイベント?を見逃しはしたが、無事焼き上がったというので9月末に取りに行った。出来上がりはこんな感じになった。
皿の下地の釉薬を筆で塗ったのが失敗でもうちょっとどっぷりかけたようにしたかったが、筆で描いた魚の具合はなかなかいい感じに仕上がったと思う。わずかにヒビも入ったがそれも味ということで……。
織部の釉薬を塗った左下のこねこね感満載の小皿や魚型の箸置きもそれなりにいい感じである。
先生曰く今年は全体的に割れも少なく概ね上手く焼き上がったそうである。すばらしい。
他の方の作品も個性豊か。
はじめて参加してみてすごく楽しかったのと、実際に焼いてみて課題ややりたいことも出てきたので来年も絶対に参加したくなった。こうしてみんなハマっていくんだなと、窯芸教室が人気な理由がわかった気がした。
しかしこんな魅力的な取り組みのある三中も、生徒数が少なく常に存続の危機に直面している。窯芸教室もいつまで開催し続けられるのだろう。できることは何でも応援したいと思うが、国全体が少しずつ縮小していく大きな流れの中でできることは本当に少ないと悲しくなる。
せめて今だけでも生徒さんが三中で充実した時間を過ごせたらいいなと、授業参加の依頼があった時なども積極的に参加するようにしている。
つい先週も職業人講話にお声がけいただき、編集室のとも子氏と一緒に海外で暮らした経験から見えてきたことについてお話ししてきた。
質疑応答などで生徒の皆さんの無垢な好奇心に触れると、地域の人々に見守られながら健やかに育っているな〜と実感して嬉しくなった。
どうにかこの先もできるだけ長く、この地元の特色ある学校教育が存続してくれることを願うばかりである。