意外に美味しい!大田のハレの日の定番スイーツ「天ぷら饅頭」専用饅頭の製造現場を訪ねてみた
「天ぷら饅頭」をご存知だろうか。
饅頭を天ぷらに!?その通り、饅頭に衣をつけて揚げたものである。
三浦は島根県大田市に移住してきて初めてその存在を知ったのだが、これがとても美味しいのである。
大田市では、天ぷら饅頭はお祭りなどハレの日に食べる定番のスイーツである。調べてみると長野県や福島県会津地方など饅頭を天ぷらにして食べる習慣のある地方はいくつかあるらしいが、中国地方では大田市以外ではあまり聞かないのでかなりローカルな食べ物だと思われる。
なんでも一説によると、もともと長野県から会津へと伝わり、江戸時代に会津から大田市に渡った吉永藩がこの地に定着させたのだとか・・・本当かどうかはわからないが、ロマンを感じる話である。
ちなみに他の地域の天ぷら饅頭は普通の饅頭を天ぷらにしているようだが、大田ではなんと”天ぷら饅頭専用の饅頭”が売られている。
今では生産している場所は2ヵ所ほどしかないというが、その一つが三浦の住む大森町にある。江戸時代から続く老舗菓子店、有馬光栄堂(ありまこうえいどう)である。
その昔銀山の鉱夫も食べたと言われる「げたのは(小麦粉と卵と黒糖でできた煎餅)」や大豆の入った「銀山あめ」など、石見銀山でしか手に入らない素朴な美味しさのあるお菓子をつくっている。
(※天ぷら饅頭用の饅頭はまとまった注文のみの受注生産で普段店頭では売っていない)
たまたま会社で大量に天ぷら饅頭を注文するタイミングがあったので、この機会に製造の様子を見学させていただいた。
お店の奥にある工場にお邪魔すると、ちょうどご主人の有馬善和(ありまよしかず/69)さんがこしあんを皮でくるんでいるところだった。有馬さんはいつも三浦編集長を楽しみに読んでくださっている読者でもある。ありがたや。
有馬さんは出雲の野球チーム・大田のソフトボールチーム・大森町の草野球チームなどをかけもちし、毎日10km歩くことを日課とするなど超元気なお父さんである。
ちなみに歩くときは時刻表を見ながらノートをつけ、旅をしているつもりで楽しんでいるという。取材時はちょうど新大阪を通過して京都に向かっているところだった。
大田の天ぷら饅頭はハレの日のメニューらしく紅白が合わさってできており、有馬光栄堂では白はこしあん、赤はうぐいすあんで作る。他の地域にはない独特の形態なのが面白く、何より目に楽しい。
丸く包んだ饅頭を手のひらで平たくつぶし、蒸しの工程へ。作業の合間にぽつぽつとお話をしてくださった。
「うちは江戸時代末期ごろにはもうお菓子を作っていたみたいだけど、お祖父さんに聞いてもいつ始まったかは分からんかった」
老舗であることは確かであるが、起源は謎であるようだった。
有馬さんの小さい頃は町に「大森座」という芝居小屋があり、有馬光栄堂はその興業をしていたという。
「しょっちゅう家に芸人さんが泊まって行ってな、可愛がられよったよ」
蒸し上がった饅頭を試食させていただいた。天ぷらにして食べるのとはまた違う、ふわふわの蒸したて饅頭もなかなか贅沢である。
最後は紅白の饅頭の底を合わせて完成。
天ぷら饅頭は、こちらの状態の饅頭を薄く衣をつけて熱した油に投入するだけ。衣が揚がったら出来上がりである。かなりシンプルだ。
半分に切るとこのようにとても綺麗な断面になる。揚げるとふっくらとしたあんの旨味が油のコクと合わさってものすごい満足感のあるおやつになる。
書いていたら食べたくなってきた。普段なかなか手に入らないのとハレの日の食べものということもあり、一年に一度か二度しかありつけない特別なおやつである。
もちろん普通の饅頭を使っても簡単にできるので、もし機会があればぜひお試しあれ。取材させてくださった有馬さん、ありがとうございました!
そうそう、そういえば信じられないことに、この秋群言堂「根々」ブランドでは”天ぷら饅頭柄”の服を出しているらしい。マジか・・・。よろしければこちらもご覧あれ。それではまた!
<おわり>