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彼女が見せてくれたアメリカ〜その声と歌の秘密〜

"Abox展2023"が横浜市民ギャラリーにて10/5から10/9まで開催された。
※Aboxについてはこちら→https://www.a-box.jp

この展示に参加するのは昨年に続いて2回目。今年のテーマは「彼女が見せてくれたアメリカ〜その声と歌の秘密〜」。

1973年に創立され、シアトルが活動拠点のPatrinell"Pat"WrightさんとTotal Experience Gospel Choir(2018年に45周年記念コンサートで終了)の写真を展示し、QRコードを読み込むとスライドショーと彼女たちの歌を楽しんでもらえる仕掛けを作った。

Patとこのクワイヤー(合唱隊)に出会ったのは2001年。シアトルで偶然聴いた彼女たちの歌、特にPatの声に心をわしづかみにされて、それから事あるごとにシアトルに足を運んで演奏を聴き、社会活動に同行して多くのことを見聞きし、体験した。
その時に撮りためた写真を今回はセレクトしたのだが、思った以上に過去を振り返る豊かな時間になった。

Patはアフリカ系アメリカ人で南部出身ということもあり、ディープサウスと呼ばれる地域のこともよく知っていて、彼女自身も差別や不条理なことをたくさん体験したけれど
このクワイヤーは黒人、白人、アジア人、インディアンの人たちや今でいうLGBTの人たちもメンバー。とにかく多様性に富んでいた。

そしてさらに、Patの歌は私にとって壮大としか言いようがなく、歌そのものであり、ゴスペルそのものに思えた。
なぜこんなに確信を持って歌えるのか。さらに声の中に無数のバイブレーションみたいなのがあって、そのひとつひとつに彼女の体験してきたことや感情や力強さが全部混じり合っているように聴こえた。

そして、その波が私のそれまでの人生で感じたことや何やらに共鳴して、聴いているこちら側がなんとも言えない肯定感を持つとでも言おうか、でも言葉にすると、本当にもどかしいけれど
そこを超えたメタの部分をこちらに伝え、与えてくれるような声と歌にいつも頭の先からつま先まで震わされるようだった。

最後に聴いたのは2019年の8月。この後はコロナ禍でアメリカに行くのが困難になってしまった。
そして昨年2022年の8月に彼女は78歳の生涯を閉じた。もう一度あの歌を聴けなかったのが本当に残念で、何より会えなかったのが悔しい。

あの歌声を生で聴くことはもうないけれど、生きていた頃に聴いた人の心を揺らしたり照らしたりした声や歌の波は、微細かもしれないけどこの世界のどこかに残っているのかもしれない。

今回、会場での写真のインストールが終わり、俯瞰した時に「写真」がこれまでの時間や、私が見た姿や景色を質量を持って残していたことに気がついた。
この20年、断続的ではあるけれどPatに見せてもらったアメリカやゴスペル、そして共に過ごした大切な時間を
私の人生の大きなひとつの経験としてまとめられたと感じた。
それをこの期間中、皆さんに観ていただけたことが何よりも嬉しい。

今回、Abox展に来場し、展示作品を見てくださった方たち、本当にありがとうございました。

※こちらで展示以外の写真と彼女の歌声を紹介しています

●episode 1

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