down to earthな幸せとは?『LE SSERAFIM Documentary ‛Make It Look Easy’』~感想日記~
『LE SSERAFIM Documentary ‛Make It Look Easy’』
概要(ネタバレ)
※「」内の言葉は実際のものではなくニュアンスを要約したものです。
《EPISODE01》
2022年年末ステージのリハーサルをしているメンバーたち。パフォーマンスディレクターのパク・ソヨン氏は「上手くやるのもいいけど、ステージを楽しもう」と言うものの、メンバーたちは口を揃えて「上手くやりたい」とカメラに語る。自分たちの映像を確認しながら細かい部分を指摘し合い準備するメンバーたち。ウンチェが『ミュージックバンク』のMCに決定したことをメンバー全員で祝福する場面も描かれた。そんな中迎えた『UNFORGIVEN』メディアショーケースのリハーサル中、ウンチェの呼吸が乱れるハプニングが起こる。スタッフたちが引き留めようとする中「大丈夫」と舞台に上がりパフォーマンスをやり遂げたウンチェは後のインタビューで「『これは必ずやるべきだ』とその気持ち一つでやっていた」と語る。「止まる方が怖い」と語るのはメンバー最年長のサクラ。リーダーのチェウォンも「このグループが最高だと言えるタイミングではない。ガールズグループの中で最もかっこいいパフォーマンスをし、ストーリーを見せられる唯一無二のグループになりたい」と語るのだった。
《EPISODE02》
『ミュージックバンク』MCの初放送を無事終えたウンチェは「好きとか嫌いとかではなく、クセなく上手だねと言われたい」と話し、続けて「『笑顔が素敵だ』と言われるが、年をとり今のように笑えなくなったらどうしようと思うときもある」と語る。「人の目を気にしているんだと思う」と語るのはユンジン。「練習生の頃はデビューするため周囲の期待に応えようと頑張ってきたが、デビューしてからは『それってどうなんだろう』と考えるようになった」「デビューティザーで『アイドル界を変えたい』と言っていたけれど、そのためになにかもっとしないといけないと思う」と話すユンジンは自作曲の『I≠DOLL』を発表。「私の伝えたい話で音楽を作って 聴いた方たちがいい影響を受けて 私が伝えたメッセージによって世界が少しだけでもよくなったのなら 私にとってはそれが成功なんだと思います」とインタビューに答えた。「これまでは一つのことに集中していたが、今はいろんなことを上手くやる必要がある」と悩みを打ち明けるカズハは、シューズを脱いでバレエの練習室を後にし、LE SSERAFIMの練習室でダンスの基礎をレッスンするのだった。
《EPISODE03》
たくさんのFEARNOT(ファンの名称)が集まる中、『UNFORGIVEN』カムバックショーが上映される。ファンに向けて挨拶を終えた後サクラが突然涙を流し、その後のスケジュールを欠席してしまう。その時について後のインタビューで「練習でできていた部分が上手くできていないことに気付き申し訳ない気持ちになった。泣きたいのにファンの前だから笑っていないといけないのが辛かった」と語るサクラ。また「自分がなぜ、あえてアイドルを選んだのかと思う時がある。自分よりももっと上手くやれる人がやったらいいんじゃないかと」とも語ったが、その後「周りからなんと言われても私が一番ワクワクして楽しくて幸せを感じられるのはこの職業なんです。私がうまくできなくて才能がないからと言って諦めたり疑うことは違うかもしれないと思いました」とビデオを回すサクラだった。
『UNFORGIVEN』MV撮影時に体調を崩し点滴を打つチェウォン。しかし、撮影が始まるとそれを感じさせないパフォーマンスを見せる。インタビューで「(この仕事は)簡単ではない」と語るチェウォンは「同年代の子たちがどんな青春を送っているのかと思うことがある」と続ける。アイドルではない別の人生について思いを馳せることがあると語る二人だったが、サクラもチェウォンも「その人にはその人の悩みがあるだろうし、人は自分にないものを羨むものだから、結局はみんな同じ」と語る。サクラは「だから今の目標は一日一日を楽しむことです」と話し、チェウォンはこの仕事を続ける理由について「愛され続けたいから」と語るのだった。
《EPISODE04》
2023年、ツアーに向けて準備をするメンバーたちは食事をしながらファンを楽しませるためアドリブ部分について話し合っている。韓国、日本、ジャカルタなど各国のFEARNOTたちがLE SSERAFIMへ応援のメッセージを送る。そんな中、バンコク公演の一日前、メンバー3人がA型インフルエンザとなり公演中止となってしまい、その後体調が回復し切らなかったチェウォンが2週間活動休止となる。メンバーがそれぞれ悔しい思いを味わう中、FEARNOTの男性は「自分は営業の仕事をしていて『また失敗するのではないか』と怖くなる時があるが、LE SSERAFIMのメンバーも困難に遭いながらさらに上を目指していると思うと頑張れる」と語り、また別のFEARNOTの女性が語った「目標を叶えたからといって終わりではない」という言葉に対しインタビュアーが「メンバーと同じようなことを言いますね」と返すと「影響を受けているのだと思います」とその女性は笑みを浮かべた。ユンジン、そしてサクラは「活動の意欲はFEARNOT」と語りメンバーとファンとの関係性が示された。
《EPISODE05》
メンバーたちはインタビュアーからおそらく”幸せ”について問いかけられている。サクラは「デビュー当初は努力すればなんでもできると思っていたが、そうして忙しく過ごしているうちに今は目標を失っている気がする」と語る。「自分の思っていた幸せが本当の幸せなのか分かりません」と語るカズハは「これをしたら幸せになると思っても、そこには大変なこともある。そうすると自分のことが信じられなくなる」と続けた。インタビューに答えようとしたチェウォンは「よく分かりません」と涙を流す。「『意欲を失ってはいけない』と思うが自分自身がついて来てくれないこともあり、プレッシャーに感じていた」と語った。
『Perfect Night』が世界中で大人気となり、メンバーたちは喜ぶ一方で「これを越えられるのか?」と不安も感じていた。『EASY』はこれまでと異なるタイプの楽曲であることもあり苦戦を強いられ、MV撮影ではメンバー同士が意見を出し合い納得するまで一曲フルで8テイクも踊るストイックぶりを見せた。撮影を終えたメンバーたちはLAのホテルで食事をしながら本音を打ち明け合う。「努力すれば皆に少しでも追いつけるかと思ったが、どんどん大変になっていく」と涙ながらに話すカズハ。ウンチェやチェウォンも「周りの環境に恵まれているが、だからこそ自分がついていくのが大変」と話す。サクラは「でも休んだら楽しくないから」と語りつつ「私たちは幸せになるために仕事を始めたのに、それが感じられない」と続ける。「幸せってなに?」とメンバーに問うたサクラは「成功が幸せじゃない。成功を追い求めたらきりがない。こういう瞬間こそ、後になって幸せだと感じるのだと思う」と語り、またメンバーに対して「今はスケジュールが大変な時だけど、いつかそうでない時が来る。一つ一つ今を大切に思ってほしい」との思いを明かした。「メンバーとのどの瞬間もいい思い出で、この小さな幸せがいつまでも続いてほしい」と語るカズハ。ウンチェは「LAでメンバーと話した時間がとても幸せだった。慰めにもなり自分の責任を感じる時間でもあった」と話す。サクラは「大きな夢を持ち続けていたい。その夢が、最後まで頑張ってそれでも叶わなかったとしてもメンバー同士で頑張ったということが幸せで宝物で青春だ」と語り、ユンジンも「5人で汗と涙を流し努力している今が青春だと思う」と微笑む。インタビューで涙を流していたチェウォンは「涙を流したことや悩んでいることを、いつか笑えるようになりたい。『大事な時間だったんだ』と気負わず思えるようになりたい」と話すのだった。
感想
泣いた。LE SSERAFIM様、関係各位様、素晴らしいコンテンツをありがとうございます。
今回のドキュメンタリーは'Make It Look Easy'というタイトル。『EASY』の楽曲のテーマともリンクしますが、「難しいことをいかに簡単そうにこなして見せるか」というプロのアイドルだからこそ決して見せない"It Look”の部分をとらえたドキュメンタリー。体調不良でもカムバックショーやMV撮影に臨み全く不調を感じさせない姿はまさに’Make It Look Easy'でした。
EPISODE01でパフォーマンスディレクターのパク・ソヨン氏が「上手くやるのもいいけど、ステージを楽しもう」と声をかけますが、メンバーから出てくるのはやはり「上手くやりたい」という言葉。ファンや大衆の期待に応えるため努力を惜しまない彼女たちの姿を見ると切実にその思いが伝わってきます。しかし、そんな彼女たちも私たちと同じ人間。「アイドルじゃなかったらどんな人生だろうと考える」「今が幸せかどうか分からない」という赤裸々な言葉も飛び出しましたが、最後には「成功が幸せなのではなく、メンバーと共に汗と涙を流し努力している今この瞬間が青春であり幸せなのだ」と語るメンバーたち。この気づきこそが'Make Easy'であり、冒頭にあったパク・ソヨン氏の言葉にもつながるのかなと感じられ、かなり『人生』を感じるドキュメンタリーでした。
カズハがどこかで「どんなに辛くても楽しいことを探すようにしています」って言っていたのがずっと頭に残っていて('The World Is My Oyster'のドキュメンタリーだったかな)、「あぁ、そういうマインドを忘れないでいたいな」って思ってたのですが、それともつながりますね。
メンバーさんたちも周りにいる方たちも本当にいい人たちばかりなんだなと感じたんですが、個人的大リスペクトは宮脇咲良大先生です。まじで名言祭り。人生何週目なのか聞きたくなっちゃう。
これは資本主義社会へのアンチテーゼであり「今ここ」を生きることの美しさと幸せについて語っていると思います。つまり「生きる」ということの答えがここにある…………!!!
「辛いことも楽しいことも幸せであり青春である」。「生きる」ってそういうことじゃないですか?なんのために生まれたのか?なんのために生きるのか?いろんな感情を体験し味わうためじゃないですか?そう思うと、サクラちゃんやメンバーたちがたどり着いたこの答えはまさにdown to earth、地に足のついた「生きる」ことの意味だと思いました。
これまでのイメージだとアイドルと言えば、「綺麗なとこしか見せてはいけない」「しんどい部分を見せない」「なんでも涼しい顔をしてこなす」のように、「完璧」を求められまさに偶像のようにその理想像を押し付けられてきた存在と言えるのかもしれません。ですから、もし古いタイプのアイドル像から抜け出せない人からするとドキュメンタリーと言えどこんな風にアイドルの裏事情や赤裸々な思いが明かされることやアイドルが弱音を吐露することに対して「プロ意識がない」「失格」などと思うこともあるのかもしれません。でも、今回のドキュメンタリーでLE SSERAFIMがみせてくれたメッセージは「地球を生きるのってそんなに簡単じゃねぇぞ?」というもの。そして「でもだからこそ、そんな地球の重力、重みを感じつつ楽しんで青春してこ?」というメッセージ。私の大好きな楽曲『No Celestial』の歌詞にもある「私たちは天使でも女神でもないんやから、地に足つけて生きてれば大変なこともあるやろ。せやけど泣いて笑って楽しも?」(なんで関西弁)というメッセージはどんな状況にいる人の背中も押してくれるパワフルさがある。
自分たちの夢に本気だからこそプレッシャーに負けそうになる彼女たちが、ファンと支え合いメンバーと支え合う力を糧にしながらもがき続ける。そして最後には夢に向かう過程そのものを幸せだと言えるようになっていた。自分が人生に行き詰った時には何度でも、ここに刻まれている彼女たちの姿を思い出したい。