プリンセスになっても自尊心は生まれない
世界中から愛され、憧れられた女性がいました。
彼女の名前はダイアナ。イギリス王室のチャールズ王太子の初妻です。
ニュースでは、「ダイアナ妃」と呼ばれていますが、彼女自身は、自分のことを「プリンセスダイアナと呼ばず、ダイアナと呼んで」と言っていました。
ダイアナがこれほど愛されたのは、その見た目の美しさだけではもちろん無く、等身大の女性として、自由を求め、挑戦し続けたからかもしれません。
しかし、彼女も最初からそんな女性だったわけではありませんでした。
ダイアナはイギリスの貴族の家庭に育ちました。
しかし、幼い頃に両親が離婚し、それがタブロイド紙を賑わすニュースとなります。
そんな環境の中でダイアナは成長していきます。
そして20歳という若さでチャールズ皇太子と結婚。
彼のことをとても好きになり、その結婚は、まるでシンデレラのような夢のような出来事でした。
しかし結婚後は、王室での生活にもストレスを感じて、過食症や自傷行為を繰り返すようになりました。
またチャールズ皇太子との不仲も重なりました。
彼女の言動を見て、皇室の一部の人からは気がおかしくなったと言われました。
そのときに、彼女のことを心底心配した友人が、
「あなたが医者にかかって病気と向き合わないのなら、私が世界に病のことを告発する」と言いました。
この友人からの愛のある忠告から、彼女の人生が変わり始めます。
それをきっかけに医者にちゃんと診てもらい、病気について調べ、治療を試し、自らを立て直していったのです。
身体と心が少しずつ回復していく過程で、彼女は自分らしく生きていくことに目覚めていきました。
今私達が知っている憧れのダイアナは、苦しみの中から誕生したのです。
プリンセスになっても幸せになれるわけではなく、自分を幸せにできるのは自分自身しかいないということに、ダイアナは気付き始めます。
そして慈善活動という彼女にしか果たせない使命に導かれていったのです。
それからの彼女は人が変わったように積極的になりました。
皇太子の側で笑っているお飾りではなく、マスコミが期待するファッションアイコンでもなく、本当の自分を取り戻したのです。
ダイアナは、取り組む問題に対しては、専門書を何冊も読んで勉強し、専門家や関係者との対話を重ねました。
エイズを患う人々と手袋なしで、素手で握手をしたパフォーマンスは、世界中のマスコミに報じられました。当時、差別を受けていたエイズ患者のイメージを変え、触れ合うことの安全性を世界に伝えたのです。
夢のような結婚から一転、孤独で辛いな日々を経験したダイアナ。
彼女が最後に掴んだものは、自分を自由にしてあげられる強さでした。
私達はこの仕事が成功すれば、結婚すれば、子どもを授かれば・・・
と、なにかが叶えば幸せになれると思ってしまします。
でも、それによって満たされることはきっとない。
幸せの種は自分の中に既にあって、そのために今を変えていく強さを持たなければいけないのだと、ダイアナは教えてくれました。
参考:「彼女たちの20代」山口路子