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窓口担当者の悪魔

 株価乱高下にあたり肝を冷やしている世界人口は少なくはないでしょう。もちろんこれからもどうなるのか?まったく予想は不可能です。

 株価は人々の様々な憶測でしか動いてはいないので、個人で知り得た情報の早とちりや警戒心等、そもそもあまり正確でない情報で動作し、結局、人の不安定心理が反映されている非現実的な内容が現実に投影されている、にしか過ぎないのだと思います。
 
 株価上昇、下落は、人間世界、世界経済に対する期待、もしくは不安心理の表れである事は言うまでもありません。

 不正確な世情情報を基に考察された憶測と感情によって動かされた実体の無い評価、判断予測に、人々の投資行動が左右され、それが値として実生活に影響を及ぼす、と言う、考えてみれば、妙でおかしな世界だと思いますが、これによって富の形成が行われる可能性があるので、人は必至になって数字を追いかけてしまいます。

 株価下落、資産価値減少があったとすれば、なによりも恨みたいのは、まずは状況でしょう。なぜ下がったのか?なぜ下がっているのか?これは理不尽な考え方で、決して答えはどこにも無いのですが、何故下がったのか?と、損失を被った人は、誰かにすがる気持ちで問いたいのだと思います。これは、原因究明が出来ない事による、憂さ晴らしにしか過ぎません。

 次に恨むのは投資支出に至るまでの経緯。それが自分個人での選択だったのか?誰かに勧められたものなのか?自分個人での単独選択であったのなら自分を恨むしかありませんが、他者からの情報であったりした場合、その情報提供ソース、もしくは勧誘してきた対象に対して悪い感情を持ってしまうに違いありません。

 どんな情報や勧誘であったとしても最終的には自分の決定で損失を出した事は間違い無いのですが、損失のきっかけを作ったのは、何処の、何なのか?いくら原因を探って、何を口にしたとしても、もはや損失を埋める事は出来ません。しかし、損失を出してしまった人は、その解明を執拗に追求するでしょう。

 そして思いつくところが、投資に至った経緯と投資を勧められた機関や担当者個人。多くの場合は銀行や証券会社等の担当者になるかと思います。

 銀行や投資家達は、全能では無く、万全でもありませんので、その分野に関する知識は十分すぎる程持ってはいるかも知れませんが、ではどうやったら損をせず利益を上げる事が出来るのか?そこまでは知りませんし、誰にもわかりません。人間には、見えない先、と言う未来を断定する能力は持たされていません。それは決して見えないのです。

 それに、知識や計算だけで株式動向の判断が完全に、つくわけでもありません。もし勉強すれば知識や知恵を得て、その通りになるのであれば、証券会社担当者、投資専門職達は、みな投資で確実に成功を収め、個人ですでに大金持ちになっているはずです。

 窓口担当者は投資を勧めます。もちろんそれはその人個人に営業をかけているだけで、簡単に言えば「利益が出れば良いですね-」程度の認識や思いしかありません。

 自分の勧めでお客様が損をしたとしても、勧めた担当者はその担保をするとか、何等かの形で損失を埋める等の思いや行動を取る事は出来ません。投資を勧めたのは単なる仕事であって営業でしかないのです。

 つまり、投資商品は「もしかしたら利益が出るかもしれない」と言う想像的架空前提の基に勧められ、そして、損失が出た場合「もう少しやってみて長期的展望で取り組みましょう」と言う、決まり文句のような言い訳を、担当員から聞く事になります。

 損失は投資者個人の損失であって、投資を勧め、投資に誘致した人の損失ではありませんから、真剣に悩んだり考え込んだりする営業の人は絶対に存在しません。他人に自分の個人資産を動かすよう指示し、その契約時に手に入る手数料、つまり、投資を勧める人の仕事は、仲介による営業利益を出す事だけを目的とした仕事、職務にしか過ぎませんから。契約締結時、自分のノルマである実績獲得に満足し「にやり」と笑った後、後は他人の資産ですから、野となれ山となれです。

 「人のふんどしで相撲をとる」と言う言葉がありますが、まさに、このことわざの通りで「他人のものを利用して自分だけの利益を図る。自分は何の犠牲も払わずに、平気で他人のもので事を行う」それが、現在の金融機関における、言葉巧みに運営されている合法すれすれの職務内容、ミッションだと思います。

 投資契約後「ありがとうございました」と言う言葉は「利益が上がるかどうかわからないものにまで手を出して下さって、その手数料までも頂きまして本当に有難う御座いました」と言う本来の意味が含まれていると思います。

 もちろんすべての人が損をするわけでは無く、運よく利益を上げている方もいらっしゃるでしょう。でも、そういった方は稀です。

 今回の様に手痛い洗礼とも言える株価暴落被害を受けた方々。始めたばかりで大損と言う方もいらっしゃるみたいで、いろんな暗躍説も飛び交っている中、先ずは、何故そうなったのか?を自己責任として考えてみる事も大切な事だと思います。

 勿論、これから数値が持ちなおし、最終的には利益を上げられたと言う方々も少なくはないかも知れません。でもそうなるかどうか、それは誰にもわかりません。もとに戻って利益が上がる時が来るまでは、損失の痛みを味わい続けなければならないのです。

 ではなぜこのような苦しみを味わう事になったのか。なぜ営業担当者の言う事を信じてしまったのか。それは個人の中にある「自分の欲」です「我欲」とでも言うのでしょうか。

 人には欲があります。欲に引きずられて生きていると言っても過言ではないでしょう。
 この欲を利用して非合法的な仕業を行っている連中が巻き起こす様々な事件は、皆さん報道等で十分ご存じだと思います。非合法組織からすれば、欲の強い人程、簡単に釣れるそうです。結局、人は自分の欲で自分を損なっているのです。損失の原因は自分にあるのです。

 勿論、言葉巧みに騙す方が悪いに決まっていますが、騙される方にもそれなりの要因があるのです。「うまい話はありません。皆さん詐欺に注意し、決して騙されないようにしましょう」
 これは裏を返し、一言で言うなら「欲張りは止めましょう」

 合法であったとしても非合法であったとしても、人間は人の「欲」につけ入り、なんとか自分達だけの利益を確保しようと活動を行い続けています。しかも自分は決してその中に入りませんし、被害や損失も受けません。うまい仕組みです。

 例え損害が発生する程に状況が悪くなったとしても、それは他人事であって損害を受ける当事者ではないので、高見の見物です。自分の身の安全を確かめた上で、他人に危ない橋を渡らせるのが、現在の金融機関の募集人営業施策だと思います。その営業スタンスには悪意も感じます。

 勿論、非合法の場合は論外です。人の欲につけ込む姿勢、考え方は同じですが、彼らの場合、最初からの泥棒にしか過ぎず、悪でしかありません。

 合法的募集人の色香や、待遇、雰囲気、もしくは付き合い等、募集人が示す知識や数字に踊らされるのは自分の「欲」の部分でしかありません。
 募集人はそこにつけいり「今でしょ」と、たたみかけてきます。それは彼ら、彼女らの話術で営業テクニックなのです。
 投資が成功するのか失敗するのかなんて事は眼中にはありません。所詮自分のお金ではなく、他人のお金なのですから結果に興味なんてあるはずがありません。
 
 友人は、信用金庫の若い女性担当員から勧められた新ニーサなる一括投資につぎ込み、今回資産がほぼ半減しました。その後友人がどのような行動を取ったかについて話を聞いてはいません。

 少なからず私も「円安は続き、国内株式はこのまま上昇をし続ける」と、言葉巧みに7月初旬、やはり、うら若き女性窓口担当者から無責任な投資勧誘を受けました。「今の銀行金利は0でしょ!」と何度も積め寄られました。私は「考えさせてくれ」と言って断りました。

 今になって思えば、あの時の美人の窓口担当者の顔が、私に対して悔しい思いをしている悪魔の顔に見えてしかたありません。

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