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Stones alive complex (Pink opal)

『その直感はアテにできまへんで!』

と、ピンクオパールの直感が言った。

はて?
ピンクオパールは論理思考のメガネをかけて、ひとまず直感に従うのを保留する。

最初にやってきた直感と、その直感をすぐ否定した第二の直感は、同一者のものであろうか?

そのジレンマでわずかにだが、がたがたとピンクオパールの胃のあたりが揺さぶられた。

どこか他人事のように状況を見渡せるフラットな空虚感のポジションへとピンクオパールは意識を移動して、
自分のコンフォートゾーンの内部を観察してみる。

最初の直感は衝動に近いものだった。
1秒の1000分の1のスピードで心をつかんできた。それには、ある種のどよどよした感情が巻きついている。

その衝動が信頼の置けないものだとしたら、
なにをもって直感というものを信じたらいいのかしら?

その問いには、第二の直感あるいは衝動が答えた。

『採用する直感あるいは衝動は、
色で見分けてみるんや!』

色ですって?

よくよく目を凝らしてみれば。
第一の直感は、グレーな色で。
どこか色あせてグレてる衝動だった。
なにかを、言葉にならないなにかをヒステリックに叫んでいる。

第二の直感は、桃色で。
その桃色は、カラフルで天然ぽい無邪気な色だった。

それを見極めてから、さらに静観していると・・・

グレーのグレ衝動の前方へと素早く、桃色の衝動が姿勢制御の尾翼を上手に使ってくるりと急反転した。
後ろ向きになり、後方からついてきたグレ衝動をクチバシでぱくりと捕食した。

『どや!』

桃色の衝動が、ピンクオパールの論理思考へドヤ顔をした。

「グレーのやつは、アナタの捕食対象なの?!」

ピンクオパールの論理思考は驚愕し。
既知の論理を超えたそのコンフォートゾーン内部の生態系に論理が沈黙したせいで、思考の眼球が裏がえろうとしたが。
かろうじて観察者のスタンスだけを残してなんとか踏みとどまった。

だが。
そんなこんなしてる間に、
桃色衝動の下方から、次なるグレ衝動が昇ってきた。

たくさんの、迎撃する気満々なグレ衝動だ。

「まだまだ終わっていないようね・・・」

細く息をしつつの、論理思考。

『見とってください!』

桃色の衝動は再びさっと方向転換し、回転しながらグレ衝動の群れの中に急降下した。
群れのど真ん中を突っ切る。
グレ衝動たちも逃げることなく衝動を真っ黒にして、桃色衝動を迫ってゆく。

桃色の衝動はグレ衝動を引き連れ、
じわじわと上昇した。
コンフォートゾーン領域のアッパーサイドの天井へ猛スピードで向かう。

『アップアップさせてやりますわ!』

「お手並み拝見しています・・・」

ピンクオパールが、桃色衝動のあとを追跡するグレ衝動の数を薄目で数えた。

全部で12体もあった。
論理的にビビるべき数だ。

『心配は心肺に悪いでっせ!
なんせグレ衝動は心配エネルギーで駆動しとるんですねん。
こいつらはいつもコンフォートゾーンの床に這いつくばってる卑屈な輩で、コンフォートゾーンの天井へ近づくと高地酸欠になるはずや。
ばってん!
こっちゃは天井の裏っ側から出張ってきたよってに、ここの天井はあちきの床にしかすぎひんのどす!』

高度が上がるにつれ、桃色衝動の訛りは色々な国のノリが混ぜ混ぜになっていったが。
同時に、グレ衝動にとっての気圧低下もいちぢるしくなっていった。

それでも、グレ衝動はヒステリックな追跡を止めない。
コンフォートゾーン内の主導権の奪い合いだ。

しかし案の定、グレ衝動の追跡は長くは続かず。
突然、グレ衝動たちは白眼を剥いて落下しはじめた。

桃色の衝動は『ほらみてみいや』とほくそ笑み。
枯葉が散るごとくに落ちてゆくグレ衝動たちの複雑な落下コースを、横糸で縫いあわせるようにジグザグとすり抜けて、一網打尽に捕食した。

『転落衝動と楽天衝動は、きっちり色で見分けてや!』

桃色の衝動は満腹げにそう言い残すと、
天高くキラン☆と消えた。

見送るピンクオパールの目の前で、
コンフォートゾーンの天井は、
カラフルな床となった。

(おわり)

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