Stones alive complex (Fluorite in Quartz)
平将門の体に、うざったいフォーメーションでしがみつくカラスたち。その大合唱に彼は耳を塞ぐ。
そうそう、カラスといえば・・・
地球の大気圏外を、ひとつ眼のカラスたちが無数に飛んでいた。
白眼が無く、そのつぶらな電子部品の瞳は、ずっと地上の様子を監視している。オーディンが操るワタリガラスと同じく、ありとあらゆる波長で対立勢力の情報を探る。
もちろんカラスたちに紛れ、荒っぽいチタン合金で造られたタカも飛んでおり。
その鋭いツメとクチバシまたは高周波の鳴き声で、敵対勢力側のカラスを次々と撃ち落とす。
(おおかたの鉄鮫は、どうやら始末できたようね・・・)
高千穂に立つガルーダは、インドラの矢を引っ込め肩に担いだ。ひと息ついて夜空を見上げる。
何個目かのひときわ眩い光球が、彼女のはるか頭上を長く流れた。
撃墜されたカラスが大気圏の空気と摩擦して、羽の欠片も残さず燃え尽きてゆく。その刹那の輝きは切なげ。線香花火のように、夕闇のブルースのように。
空とひとつになったカラスはもう見つからない。
海とひとつになった鉄鮫ももう見つからない。
ついでだが、大きな野火が消えたら、
陸とひとつにされた地底王国ももう見つからない。
その存在など元から無かったかのように。
この世は、元から有るはずの無いもので満ち満ちている。
たぶん、今のところは・・・
(おわり)