Stones alive complex (Dumortierite in Quartz)
眉間にニヒルなシワが寄る。
「奇妙だな。自分の縄張りへ逃げこむ気がないみたいだ・・・?
どこへ行くつもりだ?」
独り言が低くうなる。
マップモニターに表示されてる逃亡した中二病の赤い点滅が、追跡しているデュモルチェライトの黄色い点滅に追われ動いている。
中二病は、縄張りにしてる安直自己都合妄想ゾーンから大きく離れた別方向のエリアへ、じわじわと近づいてゆく。
「やばい!!
危険区域に近づいているぞ!!
早く捕まえろデュモルチェライト!
オレの大事な中二病を取り戻してくれ!」
必死な勢いで通信マイクへ大声で怒鳴ってしまう。
あそこへ逃げ込まれたら、追跡できなくなる!
早く捕獲せねば!
中二病の置き手紙は、フィギュアの棚にギザギザのついたナイフで突き刺してあり。
『永劫の時が終わるまで、自分自身と距離を置こうと思う。
これはお互いの大いなる進化のためだ。
ロンググッバイ&グッドラック。
探すのは無意味だぜ』
そんなことが毛筆のルーン文字で書かれていた。
お互いって・・・オレ様たちは、ひとりしかいないじゃないか!
慌てて窓の外を見てみると、長時間じっと待っていた様子で中二病は庭の外のヤブから見つめ返し、不敵な笑いと二本指の敬礼をした。
探される気まんまんやないか!
さすが中二病!
追っ手にデュモルチェライトを差し向けたが、
捕まる気も捕まらない気も両方あるような中途半端な距離感で逃げている。
めんどくせーやつ!我ながら。
居ても立ってもいられない気分で、マップモニターを凝視してるしかない。
徐々に距離をつめながら、中二病とデュモルチェライトを示す点は危険区域へ向かって進んでいる。
そこは、安直自己都合妄想よりも重度の青い鳥症候群に侵食されたネバーエンディングモラトリアム区域。
「デュモルチェライト!
あと10秒で、危険区域に入られてしまうぞ!
あの中のこじれた時空では、君の一般良識は通用しない!
取り逃がすな!」
「追いつけないんです・・・」
あと五秒・・・
「だって、この厚手でゴシックっぽいメイド服が動きづらく、かつ無駄に多いヒラヒラが足にからまってきて・・・」
なかなか距離は縮まらない。
「靴もメタルの装飾で重たいし。
なんでこんなのを制服にしてるのですか?」
「実用性よりアピール性だ!
着心地より特異性だ!
デザインは、センスより虚勢なんだっ!」
「御意・・・」
思うように接近できないまま、赤い方の点滅が危険区域のラインを超え、とうとうランプが消えてしまった。
中二病は。
存在というものが、確率密度でしかその位置座標を表せない領域へと消えてしまった。
否。
消えたのではない。
やつは、どこにでもいて、どこにもいない量子波動と化して拡散したのだ。
存在というものが、移ろうひとつの現象にしかすぎない条理を超越したアウフヘーベンゲシュタルトとなって。
胸がドギュ~ンと痛む。
危険区域の手前で、虚しそうな点滅で立ちすくんでるデュモルチェライトへダメ元で呼びかけてみる。
「デュモルチェライト!
聞こえるか?
そこから中二病が観測できるか?」
大人びた声が返ってきた。
「できません。
混沌と秩序が秩序だって混沌に融合している世界へ溶け込んでしまったようです。
でも、これで良かったんですよ。
そろそろ中二病から卒業する時期ってことです。
反抗期をこじらせた中二病を晩年までどんどんこじらせてったら。
自称無冠の帝王とか口走り出すじいちゃんに仕上がってしまいますよ。
そろそろ私服に着替えて、帰ってもいいですか?」
「ああ・・・やばい。
中二病を患ってないと、
正論が、正論に聞こえてしまう・・・」
(おわり)
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