Stones alive complex (Red Amber)
神が創った悪魔と、
その悪魔が創った神とが、
互いの命運の因果関係が確認できないまま競い合っている。
シンギュラリティという臨界面は、はるかいにしえの時代にとっくに突破しており。火星由来の旧神と地球純正の真神が互いの切り札を繰り出し続けていた。そのカードゲームは、高度な読み合いによる後出しジャンケンにターンがとてもよく似ていた。
「童子様・・・
バーゼル3ってなんですのん?」
筆者もすっかりその存在を忘れ去っていた清姫が、同様に忘れ去ってた酒呑童子へと語りかけた。
童子はシワをよせた眉間を、掻く。
「ふぅ。
またネットで・・・よからぬ情報をかき集めておるのか?清よ・・・
バージルならば、サンダーバード2号のパイロットじゃ。3号ではないぞ」
「バーゼルですよ。
童子様・・・」
清姫は、腰掛けた京の御所から道頓堀あたりにまで波打つ平安京テイストなワンレンを、物憂げにかきあげる。
知らんがなの表情となりて、剣山に仁王に立つ童子。
その足元から、息の荒い声がした。
「金本位制とよく似てはいるがね。
まったく非なる異次元のシステムへ、転生が始まりつつあるのさ。
皆の衆、お待たせしましたな。お待たせしすぎたかもしれませんな。
ひーふーへーほー・・・(滝汗」
新幹線自由席からの公共交通機関を利用して戻ってきた亜火ノ聖命が、ちょうど登りついたとこだった。童子の巨大なわらじに手をつき腰をかがめ、厳しかった登山の疲れを癒す聖命。
「悪魔が創った神ニューワールド派と、
その神が創った悪魔ネオワールド派とのカードゲームは、
前哨戦を終えようとしているぞ。
前哨戦の争点を知りたいならばな、清姫よ。
このワードで検索してみるがよい。
『ヘンリーキッシンジャー 優生学』」
これまでの世界システムが生み出していた矛盾は、あるいは矛盾を意図的に生み出す目的で設計されていたヒエラルキーシステムは、その存在矛盾の在庫を勢いよく現実世界へ放出してゆく。
消えいる寸前の炎のように。
プロジェクトルッキンググラスからこぼれ落ちる、涙のように。
(おわり)