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Stones alive complex (Black star)
仕事にかこつけた三泊四日のバカンスから帰ってくると、今のところは球体の姿で廊下に転がってたブラックスターは興奮して、玄関先で翼を表面に分子構成するとぱたぱた羽ばたかせ飛びついてきた。
ウロコだらけの尻尾も分子構成し、それを首筋にからめてくる。
思わずクスクス笑ってしまう。
「そんなに寂しかったのか?」
尻尾のウロコをウェーブみたいに擦りあわせ、グー、キュル、グー・・・と音を出す。
これはお腹も空いてるってことなのかな?
たんまりエサは残しておいたはずなんだけど・・・
翼と尻尾を瞬時に消滅させ、腕時計に似たベルト状に身体を変形させると手首にしがみついてくる。
そのままブラックスターを手首に巻いて、キッチンへ入る。
食卓の上には、留守中に届いたらしい宅急便の箱が置いてあった。
人間に化けてちゃんとサインもし、受け取ったらしい。
いい子だ、偉いぞ!
ブラックホール生物をシツケるのはかなり手間がかかったが、猫よりは便利に使えるまでに、なんとか手なづけられた。
ブラックスターの今の、頭らしいところを撫でようとすると、頭らしいところを膨らませ構成して手の方へ伸ばしてきた。
頭と顎の下をくすぐったら、ブラックスターは嬉しそうにプラズマスパークを身体の内部で輝かせる。
冷蔵庫の上の棚からエサの鉄粉が入った袋を取り出す。
袋の口を縛ってる合金のチェーンをほどき、中身を冷蔵庫の横の床に置いてあるエサ皿へと流し込も・・・
・・・( ̄^ ̄)?
「おい!
エサ皿はどこやった?
まさか!?」
ブラックスターを両手で抱き上げてみる。
ブラックスターの腹(といっても強烈に渦巻くブラックホール磁場で身体の形状を構成しているから、ころころと形を変えるブラックスターの腹が、いったいどこにあるのかは不明なのでだいたい腹らしきところ)は、エサ皿の形に膨らんでいた。
食ったばかりで、消化の途中らしい。
やれやれ。
ブラックホールだから、ブラックホールのように何でも食って圧縮しちまう。
食べていいものと、食べちゃあかんものはあれほどシツケてきたのに。食事の作法はシツケ直しだな。
じっと見つめて注意しようと・・・して、考えを止めた。
初めてこいつに留守を任せてみた。
留守中に家がどうなるのか、一抹の不安材料とたっぷりの好奇心があった。
結果はまあ、ちっぽけな許容範囲内の問題は起こったものの、なんとか留守番はこなせたんだ。及第点としてあげよう。
とにかく旅の荷物を整頓して着替え、落ち着こうか。
二階にある自室へ続く階段を二、三段昇ったあたりで身体が止まった。
「おい!
二階はどこへやった?」
途切れた階段の先には、青空と積乱雲が見える。
階段の下では、謝罪会見風な礼服を構成して身にまとい、しれっと正座してるブラックスター。
「人間の真似して謝っても無駄だぞ!」
(おわり)