Stones alive complex (Roman Glass)
剣山の頂きだけ球形に空く、雲海の蒸気。
「ほう。蒸気を逸したか・・・」
あえての誤字でしか伝わらない亜火ノ聖命のシャレに、根は生真面目な酒呑童子がわざわざツッこむ。
「それは常軌よな!」
わざわざには関わらず、淡々と聖命。
「もとから逸していた蒸気のような世よ。
それがいよいよ正体を隠さなくなってきたまで」
ふふと意味ありげに笑み、続けて時勢をシャレる。
「観戦者は無し、か・・・」
堪えきれず、くくくと漏らす。
「聞いたであろう、公式発表をさ!
本当は、観戦者は無しなのだよ」
下界の見晴らしはここから広く、その解釈も拡大してゆき。
「さらには。
要請に応じない者は強制されるとも聞いたぞ。
わかるか、童子よ!」
「単に、同音異義語で遊んでおるだけ、のようだが?」
気にせず、聖命は畳み掛ける。
「要請は強制されたもの!
ゆえに、観戦者は無いんだと!
そう正直に告白しておるのだ!」
「だーかーらー。
同音異義語でただ遊んでおるだけ、のようだが?」
あっはっは、と折った腹を抱える聖命。
「真実には絶対の命が宿っておる。
そのチカラは必ず協議のほころびを言の刃で裂き、口を突いて、はい出てくるものなのだよ」
「そこは虚偽な・・・
いや、競技か?」
「しばらくはずっと真実ってやつが叫び続けるぞ。
観戦者はいないんだとな!」
将門のなんでや念が意識の山河をゆさぶり、
空の気が蒸気を逸した山の頂。
もはや逸するべき時に逸しない方が逸してる、それこそが振り分けの勢いとなるまで。
隠されるほどに、より際立つ真実の高み。
強く吹かれるほどに、より薄まる主張の気圧。
三結のせいか、聖命の気分はいい漢字な感じだった。
(おわり)
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