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Stones alive complex (Kyanite)
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近代の戦争は、戦争には見えない。
にぎやかな街並み、忙しく行き交う雑踏、そこへ見えない弾丸が飛び交う。
あの手この手で弾道を曲げ、三撃目、四撃目と飛んでくる。つぶやき鳥の噂では、七撃目までのカートリッジがあるそうだ。
弾幕は迷路の壁となり、正しく聞こえる放送の号令は壁へ突撃せよとしか叫ばない。
弾幕を避けて進めるルートは薄暗く見にくく、世論が自信満々に指さす道の先は弾幕のど真ん中だという始末。三撃目でほとほとと離脱してきた者と、意気揚々と四撃目をくらいにゆく者とが、不条理にすれ違っている。
初撃からしれれっと避けてきた身としては、どちらへもかける言葉の資質はなし。
これからは、自分の判断は信じない。
つまりこの先、自分の過去経験は使えない。
無数に枝分かれしているルート。進んでみないと正解が分からない。ただただ、わずかにほんのりと、明るく浮かんでる線を探すのみ。
その明るさの光源はいずこ?
光源の根拠はなにか?
根拠無きところから照らしてくる根拠。
導きのランプ無しでは歩けない。
(おわり)