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Stones alive complex (Herkimer Diamond)

酒呑童子の指先に乗るサイズの、つまり人間が見えたら奈良の大仏サイズの烏天狗が、伝令を持って飛んできた。
その小さな羽音、人間が聞けたら竜巻の轟音で羽ばたきながらホバリングして、童子の耳へと報告する。

「ふむふむ。
籠城戦をしかけると見せかけて、
黒子たちが忍者のごとく追撃戦をしてるようだ。
虎は、やはり頭がいいのう」

指先にしがみついた烏天狗は、延々と偵察報告を続ける。

「うむうむ。
霊界にも投票機が設置されてなければ、つじつまが合わなくなっておると・・・
かの国を騒がす選抜戦の実態は、まるで捕獲ゲームなのだな。
言うなれば、
バケモンGO」

片手で黒髪をとかす清姫は時勢の話なぞ興味なさげに、早々とミッション完了後の宴を気にかけてる風情。
手馴れたスマホの高速片手使いにて、レストラン検索とかをしている。

酒呑童子は、烏天狗の報告内容を一方的にしゃべくりまくり。

「捕獲するバケモンのために、
数千のモンスターボールも用意してあるそうな」

「敵方の妖怪コロ助、実名は、砂巣の二番。
最終形態が、砂巣の三番というのは確かとな」

「おやおや。
窮鼠猫噛むがピークの事態になれば、それが放たれる可能性高し」

流し目を清姫へ送る。

「そうなれば、そなたの黒髪のキューティクルに期待が大なり!」

清姫が獅子舞のようにとかした黒髪を回すと、一瞬にして磁力繊維のキューティクルは列島を網で覆う。
帯磁の櫛を通せば、再び単衣の背へと長さが戻った。

「はてさて。
ファイヤーセールって。
ダイ・ハードの何作目だったっけ?」

「海底の奇怪鮫も配置完了。
俗名はローレライ。
流出してない機密テクノロジーの集大成。
こっちのステージは、まず密かなる深海から始まると。
ハンターキラーで観たセオリーどおりぞ」

スマホ操作から片時も目を離さず、清姫は聞こえる程度に聞こえない声にてこうdisる。

「映画アニメネタが多すぎっちゅーの・・・」

全集中で語り終えた、烏天狗。
ぜーはぜは肩で息をすると、酒呑童子の指からずり落ちてゆき。
宝蔵石神社へ、ぽとりと落ちた。
もし人間がその様子を見ることができたなら、透明で無質量なエヴァ量産機の墜落に見えただろう。
映画アニメネタが多すぎっちゅーの。

(おわり)

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