Stones alive complex (Black Star Diopside)
限りなく設計図に近い、音沙汰の福音。
裏舞台に君臨してきた世界頭首の踏襲路が、カーブする。
物理法則に匹敵していた拘束力。
その黒き律令の圧政者。
自分が何者なのかを決めてきた何者かが、暴かれる。
自分で決めてきたような錯覚も、ついでに解かれる。
カーブする旧態な世間体を曲がりきれなかったチャリオットは、ぼんやり追従してきた民ごと堕ちる。
「こっから先の、大切なことは三つあるんだ。
よおく覚えとけ!
一つ目、大切なことは永遠に忘れないこと。
二つ目、大切じゃないことは秒で忘れること。
そして、三つ目は・・・」
薄く笑う。
音沙汰を脳内電話してきた未来の福音者は、頭蓋の星々を見上げ、
「・・・あ・・・忘れちゃった・・・」
コケてゆく体を支えてくれた福音者は、毅然と張りつめた指をはるかへ指す。
倒された人喰い狼を燃した煙がまっすぐに立ち昇る、空へと二本。
限りなく濃くされた赤の、黒と。
限りなく薄くされた白の、黒と。
どっちもどっち色。
「・・・あ・・・三つ目、思い出した!」
「単なる、スカシだったのかよ・・・」
「どっちの狼煙にもいい顔するのは、戦略の一種だが。
どっちにもいい顔しかできないのは、性格の一種だ。
どっちつかずの性格は、どっちのカーブの先にもたどり着けない。
ちゃんとした味方を作れる者は、
ちゃんとした敵も作れる」
福音の設計図は、
仙骨として作られた聖杯。
その拘束具を解くパスワード。
起動した神経系は輝く、天の川のように。
(おわり)