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Stones alive complex (Andesine)


今月号のファッション雑誌「VARY」の特集記事に。
新ブランドを立ち上げたオーナーとして、旧友のアンデシンがインタビューされていると聞きおよび。
彼女のために、わざわざ本屋へ立ち寄ってみた。

目的の本を雑誌棚から取り出し、パラパラとアンデシンのページを探す・・・までもなく。
ど頭の記事としていきなり載っていた。

どれどれ・・・

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⚪インタビュアー
「この度は新しいファッションブランドの設立、おめでとうございます!」

⚪アンデシン
「ありがとうございます!
ファッションブランドとして立ち上げはしたものの、実際に販売させていただきますアイテムは特殊なボディスーツに近いものなのです。
見る人によって色も形状も異なって見えるという革新的な新素材でできたボディスーツです。
なので。
ワタクシどもは服飾ブランドというよりは、
正確にはデバイスブランドなのですよ」

⚪インタビュアー
「なるほど。
すぐには理解しかねますけど。
今日、お召しになっているそのお洋服がそうなのですか?」

⚪アンデシン
「はい。これがそうです。
この服、アナタにはどう見えますか?」

⚪インタビュアー
「とっても好きな服です!
グリーンがかったブラウンの横縞がビタートーンで、すごくミステリアス!
この季節にぴったりな、鮮やかに街に映えるワンピースですよね!」

⚪アンデシン
「そう見えますか?
実はこれは、そう見えてるだけで・・・
ワタクシが実際に着ているのはグレー色の新素材を縫製したレオタード状のボディスーツなのです。
この素材から、ある種の心理誘導光波が放射されていまして。
視覚神経からその特殊な光波が送られた人の脳は、見た人の好みに合わせた服のバーチャルビジョンを脳内へ投影される、という仕組みなのです」

⚪インタビュアー
「ええっ?
そうなんですか?!
じゃあ。
ワタシ以外の人には、それはまったく別の服に見えているということですか?」

⚪アンデシン
「そのとおりです。
ちなみにワタクシには、
水色のタートルセーターにスキニーとして見えています」

⚪インタビュアー
「本当ですか?!!
信じられません!!」

⚪アンデシン
「ふふふ。
これさえあれば、今日は何を着てゆくか悩む必要は一切なくなりますね。
ビジネスでもレジャーでも、その時その場そこにいる人(自分も含めて)へ、それぞれ個別に的確なお洋服を身にまとっているように装うことができます。
ですから、これからは誰からもファッションセンスを疑われなくなるのですよ。
もし疑われたとしたら、疑う方のセンスの問題ということなりますね・・・。
冠婚葬祭のおりでも、ちゃんとした礼服に見てもらえますし。
たとえアフリカの未開の奥地へ行ったとしても、そこの原住民にさえ流行りの民族衣装として見られることでしよう」

⚪インタビュアー
「素晴らしすぎます!
革新的な服・・・じゃなくて、デバイスなのですね!
あまりにも革新的すぎて言葉もありませんが・・・
そんなイノベーションブランドとしての、御社が目指すこれからの課題とかはありますか?」

⚪アンデシン
「これからの課題ですか?・・・そうですねえ。
時代の先端を見切り発車で走りながら考えるイノベーションカンパニーにありがちな課題としては、少々ございますね。
それは。
この素材は直接に裸眼で視認しなければ効果がありませんので。
これを着て自撮りをしてSNSへ投稿しても、写っているのはグレーのボディスーツだけになってしまうわけなのです。
そこでただ今、我社では写真に撮られても同じ効果があるようなネクストバージョンの素材を急ピッチで開発中です。
実現には、まだ長い時間と莫大な開発費用がかかりそうですが・・・
このボディスーツ現バージョンの売上の利益があれば、その開発費用は充分にまかなえると自信を持って予測をしております!」

⚪インタビュアー
「な、なるほどですね!
とても期待・・・してます!
では・・・
本日はお忙しい中、
どうもありがとうございました」

⚪アンデシン
「こちらこそ、ありがとうございました!」

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どおりで、この特集記事には写真が一枚も無い。

雑誌を棚へ戻す。

さてと。
確か、『進軍の魔人』のコミック新刊が出てたよな。
買って帰ろうっと!

(おわり)

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