ダンジョン飯12巻のチルチャックについて
notoを使うのは初めてだったりする。普段ならネタバレ込みの長文はTwitterのふせったーで済ませてしまうところだけど、まあ実験的に。
で、「ダンジョン飯」12巻のチルチャックについて!
12巻はいよいよクライマックスで、他にも無数の面白さに溢れている。しかしその中で私に1番ズガンと来たのは混乱するマルシルを“こちら側”に引き止める為の仲間たちの言葉、そしてその中でおそらく最も有効であったチルチャックの提案であった。
「今回の件が全て丸く収まったら家族を集めて旅の話をするつもりだ。その時にはお前たちにも同席してほしい」
「家族の仲を修復できるよう一緒に作戦を考えてくれ」
マルシルへの影響は絶大であった。迷宮の主として壊れつつある彼女の心が完全に素で「会いたい!」「考えたい!」と戻ってきた。その後にライオスが接近して最後の説得に至り、12巻はマルシルの帰還で終わる。
いや良かった。本当に良かった。
勿論決めのライオスと仲間の言葉も良かったが、やはりあの一連のやり取りの殊勲賞はチルチャックではなかろうか。マルシルの“欲望”をあそこまで的確に突ける、その理解度に感動した。
そしてちょっと思った事を。
あの提案を聞いたイヅツミは(家族を売った)と思っているのだが、それは違うよね。あそこでチルチャックが売った‥いや捨てたのは「自分のこだわり」だと思う。だってチルチャックの家族はあの提案で何も損しないもの。そもそも父親が家族集めて冒険の話なんてらしくない事を、もう一度家族が一緒になる為に行ったら嬉しいだけだろう。更に冒険の仲間を連れてきて紹介する‥これは奥さんが出ていった原因と同じシチュなのでそれを意識した行為だとも思うだろう。そこまで家族の事考える親父だったっけ!?と驚くだろうが、それは嫌な驚きではないはず。
そう、この提案で損するのはチルチャックだけである。本来彼は自分の家族の問題を若い子の好奇心に委ねるような事は絶対嫌がる男だ。家族をもう一度一緒にしたいとは思っているだろうが、その為に自分から妻に会いに行く事を嫌がっていたくらいには頑固なおっさんだ。56話でマルシルの「花束持って会いに行けば」という提案に対して「そうだな」と微妙にぼかした表現で応えたのが精一杯。あそこも名場面で、妻の心理を的確に推察は出来ても、夫婦の拗れが簡単に解決すると信じてしまう純真さを傷つけないようさりげなく指摘する大人の言葉だと思う。実際に行くかどうかけっこう疑問だし、ましてマルシルが同席すると言ったら断固拒否だったろう。
それでも彼はあの提案をした。マルシルがそれに惹かれるだろうと、直接家族と会って仲直りの為のお節介をしたいだろうと理解して。
本当によくあれ言えたな‥と泣けた。いい仲間であり人生の先輩だ。
まあ、ただ、チルチャックはあの提案を守る気無いよねー!
事態が収拾したら絶対しらばっくれるだろうし、マルシルは絶対忘れてないから履行させようとする。この辺はエピローグで描いてくれると私信じてる。