難解です (ビジュアル系男子に教えられた琴・毎週ショートショートnote)
顔に降りかかる赤色の長い髪をしょっちゅう触っている。どこかにひっかかったり、お互いが絡まったりしそうなピアスを耳たぶじゅうにくっつけて、細身のパンツを履きこなしている。
いつの間にか、いとこの兄はそういう装いをするようになった。別にそれはいい。服装は自由だ。僕は気にしない。でも弟がいとこを見てかっこいいと言う。それはなぜか心配だった。
だから質問するんだ。一番心配な事を。
「どうしてそんなに尖っているの?」
靴の先が尖っている。めちゃくちゃに細く長く尖っている。足の指の関節や骨がぐちゃぐちゃになっていやしないか。弟があれを履くのは心配だ。
「この靴のことか?靴の先はピックなんだよ。大地という琴を、いつでもかき鳴らせるように、こんなに尖っているのさ」
黒く塗られた爪のついた指で、長い前髪をかきあげながら、いとこの兄は照れもなくそう言った。ついで弟が目を輝かせて、ぴゅうと口笛を鳴らした。
心配だ。僕は弟が心配だ。
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