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小島さん(伝説の安心感・毎週ショートショートnote)

 この春から研修医として働き始めた僕は、不幸にも最初のローテーションで救急科に配属された。
 役立たずという言葉が身に染みる毎日。悔しくて泣く事も出来ない位、なにも成せない。
 それでも夜勤は来る。勤務者が減る分、一人にかかる業務と責任が増える。不安と重圧に押し潰されそうだ。
 そんな僕の心情を察して、ベテランの救命医が声をかけてくれた。
「大丈夫だよ。今日は忙しくならない。なんてったってスタッフに、小島さんがいるからね。見てよ、あの安心感。あの人がいる日は、救急車が殆ど来ないんだよ」
 眼鏡の奥の瞳は柔らかく緩んでいる。
「そうそう、小島さんのいる安心感は半端じゃないよ」
 他の皆も口を揃えてそう励ましてくれた。
 皆に絶大な安心感をもたらす、伝説の小島さん。皆が指差すその先には、誰の姿もない。
 新人には見えないその人が救急科に現れるとき、束の間の休息が与えられる。かつての患者とも、医療者とも言われているそうだ。


こちらに参加させてもらっています。
小島、は仮名です。が、こういうのは病院あるあるだと思っています。

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