見出し画像

案件獲得のカギを握る「模写力」

皆さんは、イラストについて「模写」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?

模写とは、実際にそこにあるものを見てそのまま描き写すというものですが、どこか「創造性に欠ける」といったイメージや、「練習の一つに過ぎない」といったイメージを抱いていないでしょうか?今回は、そんな「模写」についての私の見解を述べていこうと思います。

私は、クラウドソーシングで仕事を得る以前、自分の技量を遺憾なく発揮し、出しえる力を全て出して自分の納得のいく最高の作品ができれば、いずれは仕事を得られるだろうと思っていました。しかし、初案件や多くの案件での経験を得て、その認識は100%の正解ではないと思うようになりました。

私は、初案件を獲得するまで、版権イラスト(ルフィやナルトなどといった既存のキャラクターを描くイラスト)についての依頼に対して、既存のキャラに自分のイラストの作風を盛り込み、唯一無二の個性あるイラストにして、自分が満足したものを「コンペ」に提出していました。

私が利用していたクラウドソーシングサービスでは、数人のクリエイター様が「コンペ」という完成イラストを提出し、その中からクライアント様が一番よいと思ったものを選ぶという仕組みがあったのですが、私はそのなかなか選ばれず、悪戦苦闘をする毎日でした。

そこで、ある日「既存の水着イラストをもとに、別のキャラクターの水着イラストを描いてほしい」といった依頼があり、その依頼にはクライアント様からの参考資料としての画像が添付されていました。

そのとき自分はその依頼をみて、ふと相手の方の意図に気づきました。それは

「この依頼はこの水着イラストが完成イメージだ。だから、このイラストの通りに描いてくれればそれでいい。」

ということです。自分はいままで、既存のキャラのイラストなどを自分自身のもつ技術を使って、クライアント様が望むもの以上のクオリティを提供してやろうとニンマリ仕事をしていたものでしたが、それは実は大きな間違いで、クライアント様のイメージから遠ざけていたのではないかと。

そこで私は、クライアント様が提出された参考画像をコピーするかの如く入念に観察し、模写しました。光や影、表情や指先までの仕草など、すべてを「そのまんま」描いてやろう。その思いで作品を仕上げたのです。

すると、締め切り日の前日にクライアント様から「あなたの作品が数あるものの中で一番良かった。是非買わせていただきたい。」とご連絡が来たのです。私はこの時天にも昇る心地で、思わず大きなガッツポーズをとって叫んでしましました。

それ以降、仕事に一番必要なのは「模写する力」である確信した私は、日々「模写力」を磨くために、観察眼と描画技術を高めました。冒頭にネジの画像があると思いますが、これは実際にインターネットのネジの写真を模写したものです。私はこの模写力を用いて、現在でもありがたいことにコンスタントにお仕事をいただいています。

「模写」に対して、「自分の出する技術をすべて出し切らず、従順に参考画像にのみ従うというのは、クライアントの方にかえって失礼なのではないか?」という考えを持つ方もいらっしゃると思います。しかし、私はこの「模写」という行為は、クライアント様の完成イメージと自分自身の作品を繋げる架け橋なのではないかと考えております。時には自分の個性を捨て、全力でクライアント様のイメージをそのまんま描写する。これも立派な創作能力であると私は思うのです。

クラウドソーシングでは、版権イラストを描いてほしい、といった依頼内容や、参考画像をもとにイラストを作成してほしい、といった依頼が多く見られます。そういった環境を上手く生き延びるのは、もしかしたら個人の個性ではなく「模写力」なのかもしれません。

(追記)

誤解される方がいらっしゃられないようにここにコメントさせていただきますが、原則禁止されている「トレース行為」などは一切行っておりません。その点に関しましてはご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?