泊まれる演劇「ミッドナイトモーテル'22」のシステム制御系とか音響とか
こ
んにちは。note では更新がめっちゃ止まっておりますが、開発全般にわたってそのようなコンディションなので全然大丈夫です(何が?)。。システム系の案件もポツポツあるのですが、新規開発で現場を乗り切ったあとに、リリースまで持っていく作業が億劫でそのまま塩漬けになっちゃったり、実装テストまでは持っていったものの納入の際の見積りが折り合わず塩漬けとか、そんなことがままあります。
中には加速度とかジャイロセンサ値とか心拍数をOSCで吐き出し続けてくれるアップルウォッチ・アプリなど、コア技術はすでに確立してて製品にしても面白いかなと思うものもあるので、また時間があったらチンタラUI描いてみようと思います。
と
いうわけで2022年版、泊まれる演劇「ミッドナイトモーテル'22 ルージュ・ベロアーズ」の制御系ですね。
ひとまずのコンセプトですが、
「ホテルスタッフさんの指ひとつ、iPadのGO!!ボタンのタップ最小回数で照明、音響(ライブPA含む)、映像を制御」
でした。
今回は再演ということもあり、基本パッケージ踏襲のブラッシュアップ型になっています。とはいえ、プログラム系はだいたい何時も消しては書き直しの画家のような性格なので、Max/MSPのパッチはオブジェクト指向?てゆーかクラス化を進めて、管理とリユースの利便性を高めてます。
使用するハードウェア/ソフトウェアは以下のような感じで、音響とシステム用のMacBook Proの中に、
・Ableton LIVE!でキューの基本レイアウトを組んだのち、
・Max/MSPがオペレーターさんに渡すユーザーインターフェース部分を提供します。
そいえば今回から、照明は別Macに移して独立系で動いてます。キュー信号はMIDIインターフェース経由で送り、出力されたArtNet信号はまたシステムが引き取り、VLANハブ経由で2Fと3Fにも飛ばしていますが、今の所シングル・ユニバースで足りてるようです。
LIVE! の中でやっていることは、
・照明用Macの中の照明ソフト(kwatec DoctorMX)にMIDIトリガーを送る。
(今回USB-MIDIインターフェースの mio 2台を用意し、その出力と入力をつないでMIDIノートを送信しているのですが、めっちゃ安定していて◎です。何よりお互い相手方のMacにデバイスとしては干渉しないてゆーディスコミュニケーション感が素敵です。)
・Max/MSPの中の、映像再生や静止画投影に対するキュー信号(MIDIトリガー)を送る。(何番のキューをGO!!てゆー信号はMaxからくるけど、この映像を流せ見たいなイベント信号は逆にLIVE!から送るグルグル感 @_@/")
・開場中の音楽は外部プレイリストからなので、オーディオ・インターフェースで受けたアナログ音声をLIVE!にも引き込んでます。(コンプレッサーで音量管理などもしてたり)
・Maxで再生した映像の音声は仮想オーディオデバイスの soundflower(2ch) 経由でLIVE!にリパッチして管理してます。
・ロビーに配置したメインスピーカの音源再生を管理しています。
・司会/ヴォーカル用マイクと、ギター用のDIの入力を管理して、司会PAと生演奏PAをそれぞれ管理してます。(ヴォーカルはエコー付き。)
・2Fと3Fの廊下に設置したスピーカの音源再生を管理してます。
(オーディオ信号の送信は後述しますが、DanteのDVS(ソフトデバイス)とAVIO(ハードウェア)を使用してます。)
Max/MSPの中でやっていることは、
・Excel で組んだキューデータを csv 形式で読み込み、キュー番号と名前、キューのきっかけ、に分けて表示。
・GO!ボタンが叩かれると、現在のキューを処理して、次のキューをスタンバイする。ただし次のキューにタイマーが設定されている場合はカウントダウンを開始し、時間になったらそのキューもGO!する。(これのおかげで映像再生後の戻りキューとか、1時間で10キュー程度のアナウンスキューとかも完全に放置プレイ @_@/)
・LIVE!からのMIDIトリガーを受けて、用意された静止画や映像(複数)を再生し、プロジェクターに投影する。
・外部MacからのHDMI出力を受けて、それを特定のタイミング(キュー)でプロジェクターに飛ばす(投影する)。
・特定のキューに対してショートカットボタンを用意し、チェックや本番オペレーションの利便性を高める。
・そしてこれは本番では使っていない実装なのですが、外部センサーの値をトリガーにして、紐つけされたキューのスタンバイ時のみトリガーする、外部トリガー機能もMaxパッチの機能としては実装してるので、今後はトリビアのヘェボタンみたいな奴とか、何か物理レバーとか、あと床(感圧センサー)とか、美術的に凝ったスイッチで自動的にキューがGO!できたら面白いですね。(まあ実装テストまでは済んでるんですけどこれも)
2Fと3Fでやっていることは、
・1Fのシステム周りからきた有線LANの信号を Dante(音響) と ArtNet(照明) に切り分ける。これには Audinate の AVIO と SmartShow の NetDMX mini を使用しています。(安物だけど割と動く)
・アナログ化したオーディオ信号から、廊下に設置したスピーカを鳴らす。
・ArtNet -> DMX変換した信号を自作変換コネクターを使って、客室まで伸びている有線LANケーブルに乗せ、客室側で再変換してXLR3ピンの信号線として取り出す。
そいえば今年はついでに作ったMaxパッチもあって、
先ほども書いたように、今年はメインパッチのクラス化を進めた甲斐もあって、ステージ上の別Macでサムネイル選択式の画像送信パッチも簡単に組むことができました。多分1〜2時間くらいで実装テストまでいったと思いますが、逆に受け側のシステムパッチの改造の方が手間かかった気がする。
優秀なMacの仮想オーディオデバイス
MacはOSの標準機能として仮想オーディオデバイスが組めるので(しかもめっちゃ安定してる)、複数の物理オーディオ・インターフェースや内部のソフトデバイスを自由に連結して、LIVE!のI/Oとして使っています。
装飾部屋の音源再生は、
これを使っています。家庭向けのサウンドバーですが、一部屋分としては十分な音量で、さらにライン入力もですが、USBメモリ直差しで中のmp3ファイルを再生してくれるので、スタンドアロンで一ヶ月間放置プレイな仕込みでした。
LANケーブルなのかインピーダンス100Ω/8芯のメタル線なのか
唐突にちょっと小話ですが、たいして面白くはないかもですが、泊まれる演劇のシステムは既存のホテルインフラも併用するということで、既設の有線LANケーブルについて、何通りかの使い方を混在させています。
・普通にLANケーブルとしてデータパケットを流す
・DMXの信号線として使う(既存のLED調光機制御用1チャンネル分)
・DMXの信号線として使う(DMXコンバータ〜客室の往復2チャンネル分)
欲しいところに必要な機器を配置するために、既設線を調べ上げ、時には新設工事を発注して、随分といろいろな実装を実現してきました。というわけでDMX規格のインピーダンスが120Ω、音響のデジタル転送規格ABS/EBUが110Ωなので、LANケーブルを手に取るともう(近似値としての)100Ω/8芯のメタル線としか思えなくなってしまってます。頭の中はずっと「何色何番をなにに使って、、、」みたいに動いてるる。。
今後やってみたい実装とか計画とか
さてさて相変わらず分かりにくい書き殴りの記事になってしまいましたが、当然のことながら実装待ちの計画というのもたくさんあって、少しご紹介したいなと思います。
・ArtNet->DMXコンバータに追加機能つけたやつ
知り合いの工作系(家系)照明家さんも自作マイコンキットの Arduino で無線ArtNetノードとか作ってるし、僕は有線のArtNetノードで良いので、最後に受信したDMX信号値を(入力が落ちた後でも)吐き続けてくれるリピータ機能?付きのやつ作りたいなぁとか思ってます。
・あらゆるセンサー値をMIDI変換してくれるUSB小箱
前述のシステム用Maxパッチの外部トリガー部分ですが、実装テストまで進んだ実績としては、感圧センサーでレバーの引っ張りを検出してキュー実行に使用するというものがありました。圧力センサの値を常にMIDIコントロールチェンジの値としてMaxに送り、しきい値を越えたところでスタンバイしているキューをGO!する、みたいな。
やっていることといえば単純にセンサー素子の抵抗値を監視するだけのことですから、どんなセンサーやスイッチにでも応用できます。というわけで今後はより舞台装飾に溶け込んだスイッチやトリガーセンサーの実装をしてみたいと思ってます。
というわけで、
形になったり、未完のままだったり。実装はできたけど製品化は放置だったりの残骸というか死屍累々の枯れ野のようなシステム屋の庭ですが、そんな調子ながらも、予算を感じる方角にふらふらとぼとぼと開発は続くのだと思います。
舞台芸術の世界の技術・演出面において「制御」という物事がもっともっと多様に有機的に花開いて広がって欲しいなと、思ったり、どうでもいいやと思ったりしながら、僕は僕の欲しいものを相変わらずちまちま作り続けるんですね、きっと。
でもこうして欲しいものが浮かぶのも、何とか開発してやろうという気持ちが起きるのも、たくさんの素敵な共演者の人たちの前のめりな創作への姿勢に触発されてだったりします。このミッドナイトモーテルという作品と、そこに関わっている沢山の人たちが素敵すぎて、これ隔年で再演したらいいのになん(もはや古典)、とか思ったりもするので、僕も技術屋としての引き出しはなるべくたくさん用意しておこうと思います。
最後に
言い残したことがあるとすれば、ホテルシー京都さんのアイス最高ぅーー!(定期)
です。それではまたーー
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