笑いのツボ
私が小さい頃はまだ土曜日も学校があって、お昼には終わるいわゆる半ドンだった。お昼に家に帰って来てご飯を食べて、その後『吉本新喜劇』を見るのが定番の過ごし方だった。特に好きというわけではなかったが、他に見る番組がなかったという感じだった。見たら見たで面白いし、毎週毎週、同じギャグで、分かっちゃいるけどやっぱり笑ってしまう。『吉本新喜劇』とはそういうもんだ。
先日たまたまテレビのチャンネルを変えてる途中に『吉本新喜劇』をやってて、久しぶりに見たら、面白すぎてやめられずに最後まで見てしまった。しばらく見ない間に、あの“乳首ドリル”の人が主役になっていた。今は“リーダー”という次期座長候補のポジションらしい。相変わらず“乳首ドリル”をやっていた。お客さんはそれが見たくて来ているのだ。“乳首ドリル”が始まると「(ドリルを)すな、すな、すな」に合わせて自然と手拍子が起こり、「つま先、アゴ、わき」からの「せんのかーい」で拍手喝采。面白いというより、鍛錬された芸に見惚れる感じ、もう、ある意味名人芸だ。他の座員の人たちのギャグも、何年、何十年やり続けているものばかり。その人が舞台に登場するだけて、「あ、あれやる」って分かってて見てるし、やったら「だよね」って嬉しいし、やっぱり面白い。だけど、もう一つすごいのは、毎回の出し物がちゃんとしてるとこ。今回はホテルマンの話だったが、まあとにかく主役のセリフの量が半端ない。どこまでが台本でどれだけアドリブがあるのか分からないが、とにかく喋り続けて、笑わせ続けて、物語は物語でちゃんとオチがつく。『吉本新喜劇』恐るべしだ。
でもこの笑い、私のママ友には全く理解できないらしい。その人は関東の出身なのだが、「吉本新喜劇のなにが面白いのかさっぱり分からない」と言うのだ。毎回同じ事をやってるだけなのに、って言うのだ。そんなことってある?毎回同じだからこその安心した笑い、あの面白さが分からないなんて。
関東人と関西人の笑いのツボは違うとよく聞くが、本当だということを初めて実感した。ありがたいことに、私は関東のお笑いも関西のお笑いもどちらも分かる。これってすごく得してるんじゃない?
私が住む街の高校に、漫才コンビがいる。『ハイスクールマンザイ』という吉本主催の高校生の大会の決勝に残って、優勝こそ逃したが地元じゃちょっとした有名人だ。テレビのローカルな情報番組によく呼ばれているし、地元のFMで月一度番組を担当している。その子たちは、将来吉本に入ってプロの芸人さんになりたいらしい。昔は、皆のことを笑わせるオモロい子に対して「お前、吉本に入ったら?」なんて冗談で言ったりしていたが、今や高校生の進路で「吉本(の養成所)に入る」ことを真面目に考える時代になった。まずはその前に今年の『ハイスクールマンザイ』で優勝、という目標に向かって、今日も皆を笑わせているのだろう。頑張れ。
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