てぃーんずにタイムトラベル
徳川御三家とか新御三家とか三大栄養素とか、日本には”3”という数字でひとまとめにする習慣がある。1970年代の日本の音楽シーンには“ニューミュージック御三家”という人たちがいた。Char、世良公則&ツイスト、そして原田真二。この人たちの一番の功績は、ともすればTVに出演することを拒む風潮があったシンガーソングライター界において、TVにバンバン出演するシンガーソングライターだったことだと私は思う。私は原田真二さんの大ファンだった。パッと見は、クルクルカーリーヘアーで小動物を思わせるビジュアル。ピアノの弾き語りスタイルで、歌謡曲やフォークソングとは違う、新しい感じ、まさにニューミュージックと呼ぶに相応しいアーティストだった。デビュー曲『てぃーんずぶるーす』から『キャンディ』『シャドーボクサー』と3ヶ月連続でリリース、そのどれもが当時のランキング歌番組でランクインした。今でも『てぃーんずぶるーす』のイントロを聴くだけでワクワクしてしまう。彼は広島県出身。同郷の吉田拓郎さんのプロデュースでデビュー、その音楽センスの根底にはプレスリーやビートルズなど洋楽ロックのテイストが流れていた。ロックすぎないところが良かった。
デビューアルバム『Feel Happy』1曲目のどこか宇宙的なインストから始まり、映画を観ているような、ストーリー性のある楽曲の並びがとにかく素敵で、私は夢中になって聴いた。聴きすぎて、レコードに傷が入ってしまったほどだ。楽譜を買ってピアノも弾きまくった。その後も立て続けにヒット曲を輩出していたが、いつのまにかメジャーシーンから消えてしまった。
何十年も経って再び彼を目にしたのは、私の永遠のアイドル・松田聖子さんのコンサートでだった。当時(2000年)彼は聖子ちゃんのプロデュースを担当していて、アルバムに何曲か曲を書いていて、聖子ちゃんとのデュエット曲(『夏物語』)もあり、コンサートにも参加して聖子ちゃんのバックでピアノを弾いていた。一度聖子ちゃんのコンサートで自分のヒット曲を弾き語りで披露してくれたこともあった。(確か、キャンディとタイムトラベルだったと思う。)聖子ちゃん自身、高校時代彼のファンだったと語っていた。私からしてみれば、大好きな2人が一度に見られるコンサートは、一粒で二度美味しいグリコのようなものだ。とても幸せな数年間だった。今はプロデューサーが変わってしまったので、聖子ちゃんのコンサートに彼の姿は無い。
と、つい先日、ミーミーさんの記事でスピッツのアルバムの話が出た。そのアルバムには、スピッツが歌う、原田真二の『タイムトラベル』が収録されている。かつて学校の授業で“未来”をイメージした絵を描くことがあった時に、私はこの曲をモチーフにした絵を描いたことがある。それくらいに好きだった。このスピッツバージョンは、かつて私が楽しみに観ていたドラマ『僕とスターの99日』(西島秀俊さん、キム・テヒさん主演・2011年)の主題歌になっていて、初めてドラマのエンディングで聴いた時はあまりの懐かしさに、そして大好きだった原田真二の曲を大好きなスピッツがカバーしたということに歓喜した。何十年も前(1978年)の曲なのに、全く古臭さを感じなかった。原曲よりもロック色が強めなスピッツらしいアレンジにはなっていたが、曲のカッコ良さ、歌詞の秀逸さ(ちなみに作詞は松本隆さん)は時代が変わっても、それらに対する評価は決して変わっていなかった。
良いモノは時代を越える。今回あらためて聴いてみた。はぁ〜もう好きすぎて言葉もない。