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私を女の子扱いしてくれた男の子


小学4年生の時の思い出話。
私の小学校は1学年に4クラスから5クラスあった。小学校にあがる前年の1年間は全員が同じ幼稚園に通うことになっていたので、ほとんどの同級生のことはわかる。ただ、転校生は同じクラスにならないかぎりなかなか仲良しになる機会はない。2年生の時に、一人の男の子が転校してきた。私は違うクラスだったので気づいたらいた、みたいな感じだった。その子と4年生の時に初めて同じクラスになった。そして何故かその子は、私のことが好きだった。


私が小学生の頃って、好きな子がいても仲間内で打ち明け合ったりするだけで、好きな相手に好きな気持ちが分かるような接し方をしたり、周りに気づかれるような行動をする子はあまりいなかった。だけどその子は堂々と、私のことを好きだとわかるような接し方をしてきた。例えば、テストの時間は横の人の机と距離をあけるために机を移動させる。前のほうの席の人から順番に自分の机をヨイショと持って移動するのだが、その子は自分の机を移動させるとササッと私の所にきて、「はい、そっち側持って」と言う。私とその子は机の片側ずつを持って、2人がかりで私の机を運ぶ。周りは「ヒューヒュー」などと冷やかすもんで、私は恥ずかしいのだが、その子は平気だ。「なんで?重い机を運ぶのを手伝ったらいけないの?女の子なんだから重いでしょ。」てな感じ。始めこそ恥ずかしかったが、私はこの、“女の子扱いしてもらえる”状況がだんだんと嬉しくなった。放課後に皆で自転車で遊びに行く時もそうだ。私が皆に付いて行けてるかどうか、常に気にしてくれる。少し遅れると待っててくれて、私が追い付くとまた走り出す、てな感じ。ポコペンとかで隠れる時も、一緒に隠れようと言って場所を確保してくれた。「偵察してくるから、ここにいて」とか言われたら、とても大事にされてるみたいで嬉しかった。


誤解がないように言っておくが、私はそんなにどんくさい子ではなかった。背も高かったし、走るのもまあまあ早かった。どちらかというと、男子からは“おそれられる”存在だった。小学生のころの男子って、自分より背の高い女子のことを、すぐに強いとかごつい存在のように扱うじゃない。ちょっと腕とかを掴んだり叩いたりすると「骨が折れた」とか言うし、わざと意地悪なことを言ってきて「もぅーっ」とか言いながら追いかけたりすると、「こえーっ」とか言って逃げたり。私は大体において、そういう扱いをされる側だった。今思えばそれはそれで、相手にしてほしいという男子たちの幼稚な遊びに付き合わされていたわけだが、可愛いと言われたいのに、当時はこわい、強い、おそろしい、そういう扱いをされていた。
だから余計に、そんな私をいかにもか弱い女の子みたいに扱ってくれるその子のことを、というか、そんなふうに扱われる自分のことが私は好きだった。


この歳になっても、やっぱり私は私のことを女の子扱いしてくれる人が良いなって思う。職場で重たい荷物を運んでても知らん顔の人もいれば、「手伝いましょうか」って言ってくれる人もいる。「ちょっと手伝ってくれませんか」とお願いしても「え?オレですか?」みたいな人もいる。その人の態度は私に対する気持ちのあらわれなのかな。だとしたら、私のほうが周りの人にもっと気遣いをしなくちゃいけないのかもしれない。困ってそうだったら声をかけるとか、頼まれたら気持ちよく動くとか。見た目は今さらどうしようもないけど中身だけでも、周りの人から”なんか手伝ってあげたくなる”ような人、そういう人に私はなりたいのだ。だって、女の子扱いされるのって嬉しいから。あれ、でもこの歳になると、それは女の子扱いではなく、年寄り扱いってこと?うーん、悩ましい。小学4年生の頃の自分が自分史上最高に女の子だったかも。



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