ミシガンチェリー
イラン北部とアジア西部トルコ周辺が原産地であり、古代ローマ、西ヨーロッパや中国で食されていたチェリーは、1600年代にフランスのノルマンディー地方からの入植者達によってアメリカにもたらされた。中西部に定住した彼らはガーデニングの一部としてチェリーの種を植えたのだ。そして、1852年トラバースシティの北にあるオールドミッション半島でプレスビィテリアンの宣教師ピーター・ドーティがチェリーの栽培を始めたのがミシガンでのチェリー栽培の基だとされている。トラバースシティ付近は、ミシガン湖が冬には冷たい風を和らげ、夏には涼しい風をもたらすというタートチェリー(tart cherry=酸っぱいチェリー)の生育に理想的な地理的気候条件が備わっており、よって1900年代初めまでにはタートチェリーの栽培農家がBenton Harbor からElk Rapidsに到るミシガン湖沿いに広く根付くに到った。そして、現在ミシガンは合衆国全体の75%にあたるタートチェリーの生産高を誇り、トラバースシティーは自らを”the cherry capital of the world”と呼んでいる・・・なるほど~!ということで、ミシガンの特産物チェリーについて興味を持った私のリサーチが始まった。
チェリーには1,000種以上の品種があり、大別するとスイートチェリーとタートチェリーに分かれる。
<Sweet Cherry> スイートチェリーの中で一番有名なものは濃い赤色のビングチェリーであり、続くレイニアー、クイーンアンは薄い色をしている。合衆国でのスィートチェリー生産量は370ミリオンパウンドでその内、175ミリオンパウンドは加工されて冷凍もしくは缶詰とされる。スィートチェリーは主に海沿いの州で栽培され6月に収穫期を迎える。ミシガンは毎年全米の20%、50ミリオンパウンドを生産しトップ4の生産量である。
<Tart Cherry> 別名パイチェリーとも呼ばれる。その酸味から生で販売されることはほとんど無く、収穫後すぐに商品として缶詰もしくは冷凍され一年を通して流通している。パイやプレザーブ、ゼリーやジュースその他商品に最適であることから合衆国では100年以上に渡って耕作されている。タートチェリーの大半はモントモレンシー(Montmorency)である。ミシガンはその生産量において全米一位で例年全体の70~75%を生産している。ユタは8%、ニューヨーク5%、ウィスコンシン4%、ワシントン、オレゴンと続く。アメリカ全体でタートチェリーの年間生産量は275~350ミリオンパウンドでミシガンでは200~250ミリオンパウンドを生産している。収穫期はスイートチェリーの2~3週間後、7月中旬~下旬となる。
Tart Cherryの効能
タートチェリーは抗酸化物質(antioxidant)(注1)が豊富で①酸化による細胞の損傷(老化)の防止:アンチエイジング、②炎症の抑制、③血液中の尿酸(痛風の原因)を体外へ排出させるなどの働きがあることから、癌や心臓疾患の防止、リューマチや痛風による痛みの緩和、運動による筋肉疲労の低減などに有効であると考えられている。特に加齢による脳の老化を防ぐ抗酸化物質メラトニン(注3)とポリフェノール(注4)の一種で植物栄養素で赤い色素の元となっているアントシアニン(注5)を多く含むという。そしてその上、同じく抗酸化物質であるビタミンAとカロチンの値も高いのである。健康をサポートする物質を沢山含むチェリー。以下の注釈を参考にその効能を少し学んでみよう。
注1)抗酸化物質:細胞にダメージを与える活性酸素(注2)やの反応を減弱もしは除去する物質の総称。(抗酸化作用:活性酸素の抑制)
注2)活性酸素:人間をはじめとする多くの生物は酸素を体に取り入れ、エネルギーを生み出して生命をつないでいる。しかし、酸素の一部は凶暴な「活性酸素」に変貌し、体に悪影響を及ぼしてしまう。活性酸素による害は、細胞が“酸化”され、本来の性質が変えられてしまうことによって引き起こされる。これは、鉄くぎが酸化して(さびて)ボロボロになるのと同じこと。活性酸素によって変わってしまった細胞は本来の役割を果たさなくなったり、体にとって有害なものに変身してしまうとして生活習慣病のもとだと考えられている。
注3)メラトニン:動物、植物、微生物で見られる天然の化合物。人間では脳にある「松果体」という部分から分泌されるホルモン。体内時計を介して睡眠と覚醒の周期を整え、睡眠の質を高める役割をするが年とともに減少する。ビタミンEの2倍近い抗酸化作用で活性酸素だけでなく、一酸化窒素や過酸化脂質など様々なフリーラジカル(他の分子から電子を奪い取る力が強まっている原子や分子)を除去できることが特徴。熱に強く、加工や調理の過程で壊されてしまうことは無い。
注4)ポリフェノール:ほとんどの植物に含有される。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを持つ。
注5) アントシアニン:体内組織の炎症を引き起こす酸素の働きを抑制する手助けをする。(anthos=花、 cyanos=青)
タートチェリーの効能を数値で見てみよう!
ORAC 値(活性酸素吸収能力値)で抗酸化力の強さが計れる。
※グラフにあるようにブルーベリーやクランベリーに並ぶORAC値がチェリーに含まれている。生活習慣病の防止にORAC値の高い物が有効ということで私の中でチェリーの評価が上がった!!
チェリーレシピ
チェリースムージー 4人分 (運動後の炎症回復に!)
冷凍タートチェリー 1カップ 解凍する
イチゴ 1カップ 生もしく半分解凍したもの
オレンジジュース 大さじ3
ヨーグルト ½カップ
チェリージュース ½カップ
ハチミツ 大さじ2
上記材料をフードブレンダーに入れ
なめらかになるまで混ぜる。 *1カップは240ccで計算
ドライチェリー&ウォルナッツ ブレッドプリン (朝食やおやつに♪)
*牛乳 1カップ
*Heavy cream 1カップ
*砂糖 1/2カップ
*バニラエッセンス 小さじ1
卵 4個 軽くといておく
フランスパン 10~12スライス
ドライチェリー 1カップ
グラニースミス(リンゴ) 小1個 スライスしておく
シナモン 小さじ1
ウォルナッツ ½カップ 砕いておく *1カップは240ccで計算
オーブンを325度に予熱しておく。
① 鍋に*の材料を入れ砂糖が溶ける程度に温め火から降ろす。
②①の半量をといた卵に入れて混ぜ、それを鍋に入れて更に混ぜる。
③9x9の耐熱皿にバターを塗り、ドライチェリーを散らす。
④上にリンゴとフランスパンを交互に重ね(フランスパンが層の最後に来るように)残りのチェリー、シナモンとウォルナッツを載せる。
⑤②を上からかけて残りのシナモンをふり、オーブンで25分焼く。
これまでブルーベリーやクランベリーに比べて注目度が少なかったチェリー。健康食品の一つとして取り入れるだけでなく、名産地ミシガンならではの楽しみ方もしてみよう!!!
参考サイト:http://www.choosecherries.com/
http://www.absolutemichigan.com/search/?articleid=2855
http://en.wikipedia.org/wiki/Antioxidant
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