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こんなのってないじゃないか

 こんなのってないじゃないかってことがあったんだ。
結構前にね。

 その日16時に僕らは駅で落ち合おうと約束したんだけど、女の子は10分遅れてやってきた。

電話で

「迷っちゃった、どこいるの」

なんていうもんだから、僕は

「今どこにいるの?何が見える?」 

と尋ねる。

「なんか真ん中に風船みたいなのが垂れてるの、中央改札なんてどこにあるの...。あ、あった!今改札出るね」

なんて言って、女の子は耳にスマートフォンを当てながら改札を出る。

僕はしばらくその姿を眺めてたんだけど

(なぜかってそれは、女の子がとてつもなくチャーミングで可愛かったからに違いないじゃないか!)、

こちらに女の子が気づいて手を振ってくれたからそれに右手を上げて答えたんだ。

僕は喉が渇いたから、スターバックスでお茶でも飲もうよっ提案した。

女の子も待ってましたって表情を顔に浮かべてくれたものだから、とっても僕は舞い上がっちゃったわけさ。

僕ってとんでもなく女の子のこと何も知らないから、こんなことで舞い上がっちゃう。

座る席を確保する前に紅茶を買っちゃったものだから、駅ビルを椅子を探して歩き回らなくちゃいけなくなった。

女の子には本当申し訳なく思った。

やっとのことでベンチを見つけて腰をかけたんだけど、女の子が

「ごめん、明日の授業のレポートが終わってないから18:30に解散したい!」

って言ったんだ。

そんなのってないじゃないか。

確かに僕の話はつまらないかもしれないけど、情けで晩御飯ぐらいは一緒に食べて欲しかった。

ここで僕が「いやだ」と言ったところで何にもなんないし、全然いいよって言ってしまった。

 その後、駅ビルの中を散策したんだけどあんまり話も弾まなかった。

言い訳させてもらうと、歩きながら会話って僕からしたら大変なんだよ。

座ってても気の利いたこと言える自信は皆目ないけどさ。

そんなこんなで入った本屋で、僕が雑誌『村上春樹特集』をQUICPayで購入した。

女の子は17:30過ぎたあたりからスマートフォンを手放さなくなってきちゃった。

だから、僕はやっぱりつまらないかななんて思った。

面白い話できるようになりたい、切実に。

そろそろ18:30になるってところで解散した。

最後に

「楽しかった、これでお別れなんて寂しいよ。また遊びたい」

「うん、でも、10月は忙しいんだ」

って言う会話をしたんだ。

これはつまり、そう言うことだよね。

僕だってそんなにバカじゃないから、こういう定型分の一つや二つの意味するところぐらい心得ているつもりだ。

つまり、僕は女の子にとってハズレだったのかも。

僕は結構こう言うことが多いんだけど、何回経験しても悲しいものは悲しい。

果たして、いい出会いってあるのだろうか。

なかなか答えは見つからないね。

別れ際、別のホームに向かう女の子に「またね」を手を振った。

’’また’’がありますようにって。

女の子も振り向いて、手を振ってくれた。

とてもチャーミングで美しかったな。


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