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キューウェルさんさようならまたいつか。
7月16日、契約解除のリリースが行われました。淋しいね。何故こんなことになったのか。そのあたりは多くの有識者の分析にゆだねるとして…。
わたしの中では、就任前から契約解除発表後の今まで、指揮官としてのハリー・キューウェルへの評価は変わらず、契約もこのタイミングでの契約解除も、妥当(というか理に適っている)と考えています。淋しいけれど。
そんなお話をしましょうか。
戦術とかそういうのは詳しくないので、叙情的というか、認知とか心理みたいな話が主です。てへ。
ポ ⇒ マ
話題は、マリノスサポーターを虜にしたアタッキング・フットボールの開祖アンジェ・ポステコグルーがスコットランドのセルティックの監督に就任するとのことで退任したときにさかのぼりましょう。
あのとき、後任監督として、マリノスが提携するCFG(シティ・フットボール・グループ)が推薦したのは別の方だったとか…。しかし、マリノスはポステコグルーの推薦を受けてケヴィン・マスカットを選択した、と。(このあたりは当時のマスコミ報道を思い出しながら書いているので正確な事実は分かりません)
※松永英機監督は、感謝の気持ちを胸にしつつちょっと置いておいて…
この交代に、わたしはマリノスの選択に妥当性を見出します。
異次元の強さだった川崎フロンターレからかなり離されていたとはいえ、タイトル争いの渦中で急な監督交代。しかも、ご栄転といえばそうですけれど、受け止め方次第で、まあ身勝手といえば身勝手な理由。そんな状況下で、選手やサポーターを落ち着かせるには、路線の継続が重要になります。それも、いかにも「安心してください、路線継続ですよ!」というわかりやすさが求められますよね。
わかりやすい路線継続、それは言語化するとアタッキング・フットボールを続けることなのですが、メッセージ性を見える化するならば「ポステコグルー監督のもとでコーチを務めていたオーストラリア人監督」ということになりますね!😉✨
時期的にそれが求められていたのだと思います。
それによって、安定性が得られたとともに……安定しすぎてしまった感もあります。
マ ⇒ Q
ケヴィン・マスカット監督は就任した年に準優勝、翌年に優勝、そのまた翌年にも準優勝という輝かしいリーグ成績を残して カネに目がくらんで 中国超級へ転出していきました。
さて。
慰留されていたマスカットの退任がかなりギリギリのタイミングでの決断だったため、後任選びはなかなか難しそうな印象(マスコミ報道によるものなので正確性は各メディアに負います…)
そして選ばれたのがハリー・キューウェル。
いぇあ!サッカー少年としては大喜びだ!ウィニング・イレブンで使ってたぜ!キューウェルのクロスをビドゥカがヘッド!まあ、監督経験はほとんどないけどな!
……監督経験がほとんどない、だと…?!Σ( ̄□ ̄;
マ後の高いハードル
リーグ2位という悔しい結果を受けて奪還しなければならない年。アジア・チャンピオンズリーグを制覇したい…せめて過去最高成績を残したい年。それを同時に狙っていかなければならない難しい年。
その上、マスカット監督期終盤は、これまで築いてきたプレーモデルが「うまくいかない」日々があり、正直に言って、同じ指揮官がこれを乗り越えられるのだろうか、お世辞にも監督として実績豊富とまではいえないケヴィン・マスカットに乗り越えられるものなのだろうか、という疑念が浮かんでいたのは事実です。素人の部外者としては、まあ信じるしかないのだけれどもね。
マスカットがクラブを離れることになった時点で、どん詰まりになりかけている成功モデルの修正または再構築、決勝トーナメントから始まるACLの制覇、リーグ奪還、という高いハードル重いミッションを後任が課せられることとなったわけです。
こんな状況で良う契約したな、ハリー。
なぜキューウェルだったのか
難易度MAXのシーズンに、なぜ英下部リーグでさえ結果を残せておらず、ほとんど監督経験のない若手に指揮を委ねるの?
自然な疑問です。
フロントに石を投げるのは簡単ですが、その前に。(そもそも家族に石を投げてはいけません)
キューウェルを抜擢したのはなぜか、考えてみましょう。
キューウェル抜擢の論理的整合性
マリノスは、ポステコグルー期以降、アタッキング・フットボールの旗の元、マリノスサポーターの脳を攻撃一色に染めるとともに、しっかり結果を残してきました。ポ就任後3人の監督に率いられた6年間でリーグ優勝2回準優勝2回。がっつりと、成功体験を胸に心に刻んできているのです。「細かいプレーモデルはともかくアタッキング・フットボール」で勝ってきた、という成功体験。
CFGと提携してエリク・モンバエルツが来たとき、モンバエルツが蒔いた種・出た芽を愛でながらアンジェ・ポステコグルーに引き継いだときとは、幸か不幸か、状況や心情・信条が違うんですよね。
サポーターも、選手も、フロントも。
【ここからは、どこか上の方で読んだ内容になります】
身勝手といえば身勝手な理由での急な監督交代を受けて「ACLすぐ始まっちゃうのにどうすんだよ…」な状況下、選手やサポーターを落ち着かせるには、いかにも「安心してください、路線継続ですよ!」というわかりやすさが求められていたことでしょう。おそらく、選手に対しても。
わかりやすい路線継続、それは言語化するとアタッキング・フットボールを続けることなのですが、メッセージ性を見える化するならば、それは、
それは、ああ、さっきも書いた!
「ポステコグルー監督のもとでコーチを務めていたオーストラリア人監督」ということになりますね!(入れ違いだった気もするけれど…)
【引用(?)おわり】
継続路線がわかりやすく且つ肩書や経歴でウンと言わせるほどで且つ上記3目標を達成できそうなスーパー監督を冬に極東まで捕まえてこられるかというと…正直、サポ感覚ではその自信が持てない。おそらくマリノスは、そこまでの財力はないでしょう。
となると、CFGの情報網で、謎の無名な優秀監督を在野から見つけてきたとして…短期間のキャンプだけでACLのR16に挑まなくてはならない選手たちが安心して全面的に信頼できるだろうか。(プロサッカー選手の競うレベルを考えると、むしろこうした些細な要素で信頼感やそれに起因する能力発揮は変わってくるのではないかと考えていますわたし。メンタルが全てではないけれど)
サポーターたちが波風立てずに「We Trust Our Boss.」と言えるだろうか。
それには、かなりの求心力が必要だと思われます。
そんなところで安全・安心・信頼と実績の豪州ライン。しかもポ門下。
経歴に不安なところはあるけれど、マスカットも欧州で成功していたわけではないし、ここからファミリーみんなで支えていきましょう!
抒情的ですが、ここまでの考え方に論理的な不整合はないとわたしは考えました。
したがって、キューウェル抜擢は悪くない…というか、必然に近いものだったのではないかと。とは言え、心配が伝わったのか、中山社長も新体制発表会で「CFGのリストに載っていた」と言っていましたね。
ハリー・キューウェルがCFGのリストに入っていた、というのはちょっと意外だった。指導者としてのキャリア的な意味で。
— 三沢まりの (@miTSUzawamarino) January 13, 2024
(実はCFGとは関係ない文脈でリストアップしたのかと思っておりて…)
(わたしもつい安心してしまいましたが、そもそもCFGのリストにはどのくらい多くの指導者が載っているのか…英国で指導していればそりゃ載るのでは?と思ったのはつい最近です)
キューウェル監督への期待と評価
英下部リーグで結果を出せず解任されたのは、監督の要求に選手が応えられなかったからだ、という記事をかつて読みました。
マリノスの選手は優秀だから大丈夫、という希望。要求を選手に落とし込めない指導者なんじゃ…という不安。そのあたりは常に心の中で同居していましたが、期待や評価はずっと変わりませんでした。
求められる役割に対して、あまりにも経験が浅い。
世界を極めた一流選手として経験してきたことは絶対に活かせる。
最も期待していたのは、アジア・チャンピオンズリーグです。
だって、チャンピオンズリーグ優勝経験があるんだぜ! 凄ぇぜ!
アジアと欧州は異なるとはいえ、あの国際大会決勝トーナメント独特の雰囲気を肌で感じていて、優勝した経験を選手たちに還元できる。これは、選手と大会のレベルを考えたときに、物凄く大きいと思いました。紙一重を乗り越える力、というか。求心力というか。
でも、期待しすぎるのは、お互いのためにも良くない。
わたしがギリギリ現実的かと握っていた期待は、経験値を最大限に活かし、
「ACL優勝!リーグは残念な結果に終わりましたが、ありがとうハリー・キューウェル!オズの魔法使いはクラブ史に永遠に残ります!」
そして、継続感がわかりやすい豪州路線とは決別し、わたしたちは新たな道を歩み始めるでしょう。
というものでした。
ああ…
ここまでの低迷は予想していなかったし、途中で辞めてしまうというのは考えていなかった。
ハリーと一緒にACL獲りたかったな。
選手と監督という立場で、欧州とアジアでチャンピオンズリーグを制覇したハリー・キューウェル、というサクセスストーリーで横浜から世界へ拍手で送り出したかったな…
※ACLが欧州と同じように決勝戦が中立地一発勝負だったら優勝してたんじゃないか…?決勝戦のホーム&アウェーは経験してないもんな、ハリー…
そして明日へ歩んでいきましょう
なぜ今、契約解除だったのか
キューウェル監督がやりたいサッカーを選手に落とし込めていないんだろうなあというのは試合を見れば皆感じたことでしょう。
ポ初年度は、勝てない日々が続いても、変化は感じたし、やろうとしていることはわかるがまだ到達できていない風だったし、なにより選定理由が「優勝経験監督」で現にどこでも就任2年目にはタイトルを取ってきた監督だったわけで…。ポステコグルーと同じように待ってやれ、というのもファン心理としてなかなか酷だとは思います。
ただ、落とし込む作業というのは監督だけがやるわけではないので、コーチングスタッフの人選は適切だったか、手法はどうだったか、監督とコーチの関係性は、などなど思うのですけれど、それは想像の世界。
一部報道によれば、求心力の低下が主因のひとつのように言われていたりもしますが、仮にそれが事実だったとして…これもコーチングスタッフがフォローできなかったのか、クラブ側からアプローチはなかったのか、など気になるところはありますけれど、これも想像の世界。
まあ、審判団へのクレームは…
開幕から日が浅いうちに「主審に選手交代を認められず欠けた選手がマークするはずだった相手にゴール食らって負ける」なんて経験をしたら、審判団にキレたい気持ちはわかる…俺にはわかる…。SNS見てるのかわからんけれど、あのときのマリサポ世論はぶちキレハリー支持だったので、まあ、お気の毒です…
ただ、クビにすればいいというものではないのは、そもそも今期のミッションの壮大さからすれば明らかで…
チームにとっても、クラブにとっても、非常に大切なのは「次」です。
まず、7月20日の町田戦のあと、2週間以上空きます。(意図的にニューカッスル戦を除いた)
替えるなら今しかない。
なぜなら、過密日程の最中に監督を替えるのはあまりにもリスクが大きく、また試合が続く中で新たなやり方を浸透させられるような超優秀監督を獲得するのは困難なので落とし込む時間を確保したい、更には夏秋にシーズンが始まる欧州の季節感を考えると、各クラブの指揮官の座にうまくハマらなかった謎の無名な優秀監督を在野から獲得するチャンスなのでは、と思ったのでした。
明日に向かって
わたしたちサポーターの心にこびりついている成功体験は、Brave & Challengingで勇猛果敢でアタッキング・フットボールなわたしたちを、過去に縛り付けている幻影なのではないかと感じています。
ポステコグルー傘下のオーストラリア人監督が指揮を執り、代表召集で疲弊することのないブラジル人を並べ…
いやいやCFGどこ行ったのよ。
チャレンジ精神はどこに置いてきたの。
自立は重要だけれども、困ったときこそ、肩を組んでいる仲間の力を借りてみては?
CFGのリストを見るたびにトリコロールの青の部分が水色に近づいていく、とかいうオカルト設定だとアレですけれど、力というか情報は借りた方がいいと思うのですよ。
そして、それを最大限に活かすためにも、一旦これまでの成功体験を忘れて、もう一度Brave & Challengingになっていく時なのではないか、と感じています。
(余談ですが…思い込みかもしれないけれど、マリノス株式会社の施策も、ひと頃と比べると、やや安定感/保守性が出てきたような…。もっと攻めていっていいんじゃない?と思いますが、抒情的なので具体的にこうというのはありません。悪しからず)
新監督は
ヘッドコーチだったジョン・ハッチンソンが暫定的に指揮を執ることが発表されています。
先ほど、キューウェル体制におけるコーチングスタッフはどうだったのか、と書いたものの、だからといって批判したり懐疑的になったりは、しないようにしています。まあ、経験がないという意味では不安よ、キューウェルのとき以上に。でも日本での経験もあるし、なにより「暫定」なのでね。
なにせわたしは、家族全員が転出して独り在宅に残されたとしてもマリノスファミリーであり続けると思っているので、マリノスファミリーの一員として、ハッチンソン体制を応援していこうと考えています。
が、そのことと、次期監督の選定は別のこと。
先に申したとおり、今度こそ、これまでの成功体験を振り払って、ワールドワイドな視野でステキな監督を探し出すことを期待しています。
よろしくCFG!
ホントは「実は町田戦の日に国立競技場のVIPルームから新監督が視察していた!」みたいなストーリー、全然アリですよ!😉✨
註:オーストラリア人はダメだ、と言っているわけではないです!
ただ、まるで「オーストラリア人であること」を条件にしているかのような流れを感じてしまっているわけで…。もっと視野を広く!世界に!
おわりに
超長文になったので、締めましょうかしらね。
実際のところ、クラブがハリー・キューウェル監督にどういうミッションを課していたのかわからないので、事実の上に何層も想像と憶測を塗り重ねていかないといけない内容になってしまったのですけれど、
結論としては、
適切な監督選定の困難さ
求められるミッションと監督の経験・力量のミスマッチ
クラブのフォロー不足(どこまでフォローすべきかはともかく)
これらは如何ともしがたかったと。
でも、就任にも契約解除にも、闇があるとは思わない。論理的に不整合ではないので。【今日のわたしの主訴】
なのでわたしは、サポーターの立場からは、ハリー・キューウェルにも、マリノスのフロントにも、追われる側にも追う側にも、投げつける石は持っていないのです。もっと溝を埋められればよかったのに、という哀しい想いと、さりとてこの別れは(時期はともかく)必然だったなと感じる淋しさとを抱えています。
そんなわたしがこれから立ち向かいたいこと。
これまでこれまでそうだったようにキューウェルがインタビュー記事でマリノスのことを糞味噌に言ったとしても記事をもとに本人もクラブも非難しないこと。誰もがそうであってほしいと願うこと。
持ちうる情報を最大限に活用して新体制をつくってほしいと願いながら、チームを支えていくこと。
キューウェル体制での失敗(特に監督を支える面)を今後に活かしてくれると願いながら、クラブを支えていくこと。
願いばっかりだな。
まあ、マリサポオカルト部なので、いざとなったらかなり強い念は発せられると思いますよ。フフフ。
そして、経験も浅くまだ若いのに、この壮大なチャレンジに身を置き、アジア王者という夢を夢じゃない、もう少し手を伸ばせば届く目標にしてくれたハリー・キューウェルに、感謝しています。
願わくば、違う出会い方をしたかった…
追記
最後に書いたあたりは、舩木さんや朝日新聞岩佐さんが書く中山社長インタビューで触れられておるので、この記事あんまり意味なくなった。笑
まあ、中山社長もしっかりと「いい方向」で捉えられているので、マリノスというクラブは失敗はするけれど健全だな、というのがわたしの印象です。
わたしはファミリーとして見守っていくよ。口出しはほどほどに、時に厳しく、でも真の愛を忘れずに。多岐川さんの如く(だれ?)
そして、タイトルをもたらせてくれた他の指揮官たちと同じように、敬意を持ってハリー・キューウェルを見送ります…。
これからの指導者人生に幸あれ。
そしてまたいつか。