君の未来は明るい
久々に甥に会った。
もうすぐ1歳になる。
この前まで、離乳食を口に運んでもらっていたのに、
今はとうもろこしをつかみ、かぶりついている。
この前まで、ハイハイがやっとだったのに、
今は父親の座る椅子につかまり立ち、よじ登ろうとしている。
一人の人間が、成長するのをみるのは楽しい。
できなかったことが、できるようになる。
すこしずつ、だけど着実に、大きくなっている。
数ヶ月前まで、自分で座ることもままならなかった生き物が、
あっという間に、進化を遂げている。
そんな存在が、身近にいることがおもしろい。
母親が体調不良のため、父親と祖父母宅へ。
普段は母親にべったりだが、ここでは頼れるのは父親。
父親である兄から離されると、泣き出した。
それでも私に抱っこされ、すこし歩くと、
泣いていたことを忘れてしまったように、
まつげを濡らした目で、けろっとあたりを見回している。
泣いていた子どもが、泣き止む。
それだけで、成長を感じる。
一歩前進したような気になる。
いい天気だったので、散歩に出かける。
歌を口ずさむと、私の顔をじっと見つめている。
めずらしいものでも見つけたような顔だ。
ちょっと照れながら、歌い、歩き続ける。
ちょっとして、聞きなれない声が聞こえると思ったら、
寝息を立てて寝ていた。
まつ毛はまだ濡れている。
いそがしい人だこと。
そのちいさな手は、私の服をぎゅっと握りしめている。
愛しい。
家に帰り着き、そっと座布団に寝せようとすると、ぐずる。
あわてて抱きなおす。
抱っこしたままだとつかれるので、
仕方なく、抱っこしたまま仰向けになる。
あぁー。力が抜ける。
床が、私の背中にくっついて離れなくなる。
私の上で、甥が寝ている。
そっと転がるように、座布団に横にしようと試みる。
ちょっと傾けたところで、ぐずり、服を引っぱられる。
私の甥には、ジャイロセンサーが備わっているらしい。
ちょっとした角度の変化に敏感。
はいはい、すみませんでしたと、
また、私の上に寝ていただく。
ま、いっか。
かわいいし。
もうすぐ1歳。
いっぱい泣いて、いっぱい笑って、大きくなるといい。
人生、まだまだこれからの君。
君の未来は、明るいと思うよ。