はじめての一人旅 -3e épisode
泊まっていたホテルはデファンス駅から歩いて数分程度の距離だったけれど、時間節約&安全の為、パリに出るにはホテルの小さなシャトルバスを利用していた。
我ながらくだらない事を覚えてるな、と思うけれど、バスの運転手さんが故・おヒョイさんこと藤村俊二さんにそっくりで乗車中毎回笑いを堪えていたのを思い出す。
同乗した日本人OL風ツアー客が「…誰かに似てると思ったら、おヒョイさんに似てるよね〜」「あっ❗️似てる似てる」と後部座席で急に笑い出し、?とガイドブックから顔を上げると本当におヒョイさんによく似た初老のムッシューがニコニコと振り向いたので吹き出してしまった。
ムッシューは、私達日本人客が爆笑しているのを見て、つられて笑いながら愉快そうに送迎してくれた。
夜、デファンス駅近くの暗いバスストップで不安げに待っていると、ニコニコしながらムッシューが車に乗って現れるので、
緊張が解けてホッとしたのを思い出す。
4泊だったか5泊だったか、郊外からパリ市内まで20〜30分位RERで(近郊高速鉄道という快速電車)移動して街をぶらついた(日本でも海外でも郊外から都市部に通う設定の自分…)
日程や順序は忘れたが、初めてのパリ旅では全く美術館を回らなかったので、その時はカルト・ミュゼ(Carte Musées)という1週間用のフリーパスを利用してあちこち回った。
ルーブルでミロのビーナス始め大小絵画と彫刻含めた豪華作品群、オランジュリーでモネの睡蓮、作品はもちろん、庭とお屋敷がロマンチックなロダン美術館、やっぱりお屋敷が印象的なピカソ美術館(もちろん作品も展示の仕方も素晴らしい)…ポンピドゥセンターの中の近代現代美術館でロスコやポロック、ジャスパー・ジョーンズを観てワナワナ心震わせた。
お昼ごはんはどうしていたんだろう…。
ルーブル美術館の中のセルフサービスなカフェテリアで、キッシュやサラダを身体の大きな外国人ツーリストに混じって緊張しながら食べたのを覚えている。
あと、、、下調べしていたボザール(国立美術学校)前のラ・パレットというカフェレストランにも行った。
そこは美術学生も利用する割安で美味しいカフェ、とのことなので、お洒落な画学生で賑わってるかな?とウキウキと店に入ったのだが…。
店内は恐らくガイドブックを見てやってきたよなツーリストで満員状態。
カフェのマダムが今満員だからダメダメ!のジェスチャーをしたが、日本人的感覚で少し待てば席が空くのでは…と、ドア付近で待っているとマダムがやれやれと言った風に中に入れてくれた。
(あなた一人?じゃあ相席でいい?)的なことを聞かれ、ちょっと怯んだが、他の店を探す気力体力が無かったのでやむを得ず了承した。
すると、日本人の銀行マン風の男性が一人食事しているテーブルに案内された。
庶民的カフェレストランなのでテーブルも小さく距離が近い。
四角い銀縁メガネをかけて冴えない雰囲気の日本人男性と(すみません、すみません…)何故パリくんだりまで来て相席なのか心で泣いた…(嫌な女でごめんなさい。だって1年間頑張ったご褒美で、30歳を記念する旅なんだもの…!日本的なモノは一切排除したかった←言い訳)
私が座るのを躊躇していると、マダムは
「どうしたの?気に入らないの?よくご覧なさいよマドモアゼル!彼はハンサムじゃないの」
え…(私の心の声)
フランス語クラスでしつこくされた男性を彷彿させる雰囲気の彼の前に渋々と座ると、やりとりを見ていた男性はみるみる不愉快極まりない表情に…!
私達以外のテーブルが皆楽しげに食事する中、日本人らしき男女が目も合わさず、口もきかず、シーンと食事を取り続ける様は異様な光景だったことだろう…。
男性は先に食事を済ますと、ムッツリと無言で席を立ち出て行った…。
味や何を食べたのかも全く覚えていない…