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はじめての一人旅 -2e épisode

人影まばらな夜の街にピンクやパープルの派手なネオンサインとフランス語の看板が浮かび上がっている。
映画に出てくるような、少し寂しげな郊外の街。

ホテルの裏手に廻ると大きなスーパーが有った。
日が暮れたビジネス街はゴーストタウンのように人がほとんどいない。エントランス前の暗がりで移民風の男の子がスケボーをしている。

さっきまで部屋のベッドで目をつぶっていたので、夢の中でふわふわと見知らぬ異国を歩いているような不思議な感覚だった(異国ですが…)

添乗員のお姉さんと一緒にスーパーで大ボトルのミネラルウォーターとヨーグルトと果物を買った。
(正確には果物はお姉さんが買って、私に小さめの青りんご🍏を少し分けてくれた。)

1年間自分なりにみっちりフランス語を学び、少しだけフランスと云う国が近くなったつもりでいた私は、こちらに住んで働いている彼女に矢継ぎ早に質問をした。(恥ずかしながらフランスで生活してみたい夢がほんのり…芽生えていたのだ)

多分、私のような呑気でミーハーな旅行者に何度も出くわしているのだろう。
どうやってビザを取得したか、フランス人と働くのはどんな感じか、フランスでの生活は大変か、などと興味本位で聞かれてきたに違いない。

お姉さんは明らかにうんざりした表情で
「…決して楽では無いし、多分思ってるよりも何倍も大変だし、楽しいわけではないですよ」とこちらを見ずにピシャリと答えた。

そりゃあそうだ。仕事だし、私のような危なっかしいツアー客の面倒も見ねばならない。

旅行中の浮かれたテンションで、踏み込んだ質問ばかりしてしまった自分を少し恥ずかしく思った。
 

ホテルまで戻り、明日具合が戻らなかったら外出を控えることを彼女に約束し、部屋に戻った。

洗顔し荷解きもしないまま、ミネラルウォーターを飲んだ後はベッドに突っ伏して明け方までぐっすり眠り続けた…。

数時間後、時差の都合でかなりの早朝に目が覚めた。
喉が渇いていたので、冷蔵庫からさっきしまったミネラルウォーターを取り出し、ナイフが無いのでリンゴをよく洗ったあと丸ごと齧った。

部屋の窓を開けると、向かい側に童話に出てきそうな造りのお店が幾つか暗闇に並んでいるのが薄っすらと見えた。

…やっと来れた。自分との約束を果たして。

キンキンに冷えた早朝の空気を何度か吸い込んでから窓を閉め、お風呂にお湯を張って身支度を始めた。

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