
出来杉くんじゃキャラが立たない話
[ Vol.009 ](1437文字)
先日、福岡へ向かう高速ドライブ中に助手席で娘がドラえもんの面白さや疑問について熱心に語り出した。
この前、のび太がこんな道具であんな大失敗をしたとか、もしあの道具が本当にあったらこんなことが出来るのにとか、しずかちゃんは焼き芋が大好きなのに何でそれが恥ずかしいのか?とか、スネ夫は何であんなにお金持ちで何でそれをあんなに見せつけてくるのか?などなど。
8歳の娘は同じ話を何度もリピートして観たりするくらいドラえもんが大好きなんだけど、言わずもがなぼくも小学生の頃からドラえもんは大好きだった。
最近、amazonプライムのドラえもんを娘に付き合ってたまに観るんだけど、声優さんや音楽は変わってもストーリーやひみつ道具はほとんど変わってなく、懐かしく童心に帰って観入ってしまうこともしばしば。
そんな何十年も前に見た同じストーリーを娘が笑ったり感動したりしてる状況は非常に感慨深く、やはり藤子・F・不二雄先生は偉大だなぁと心底感心します。
ドラえもんは大人になって観ても、単に幼稚で商業的な (グッズを買ってもらうことが目的になっている) 他のアニメとは違って、そこには人間関係の縮図があり、大人になると子供の頃とは全然違う視点でみれてそれはそれで本当に面白いものです。
ぼくはその車の中で娘に
「ドラえもんって大人が観ても大人の視点でみれて面白いんだよ。」
といって色んな話をした。
そもそも主人公は大体失敗ばかりするやつなんだとか、便利な道具を使って悪いことを企んだら絶対に失敗して終わるものだとか、お芋を食べたらオナラが出るのはお約束なんだとか、スネ夫は嫌なヤツに見えるかもしれないけど、お金持ちの家に生まれてしまったばかりになかなか友達に共感してもらえない悲しいやつなんだとか、パラレルワールドの話とか。短編はいつも失敗して終わるけど長編はいつも成功して終わるものなんだとか、、、。
すると娘がへぇと話を聞きながら、
「大人から見たら出来杉くんってどうなの?」
って聞いてきた。
ぼくが
「出来杉くんは何でも出来てすごいよね、でも、、、」
といったら娘が
「キャラが立たない?」
と続けてきた。 笑!
「キャラが立たない」っていう言葉が8歳の娘の口から出てきたのが妙に可笑しくてしばらくツボにはまってしまいました。
確かに出来杉くんは何でも出来てすごいけど、主人公にはならないタイプ。基本的にはミスをしないし、もし失敗してもキレずに真摯に受け止めて反省し次回は必ず成功するでしょう。
もしドラえもんが出来杉家にいても悪い事には使わないだろうし、そこにドラマはあまりなく人の心は打たない、というか「共感」ができないんだと思う。
ある意味でキャラはしっかり立ってるんだけど、あくまでもサブキャラであって主人公にはなり得ないよねといった内容を話した。
そしてそんな話をしながらふと、娘にもそうなって欲しくないなぁと思ったのです。
娘は小さい頃から周りの目が気になるタイプで、優等生(出来杉くん)を目指したがる。ぼくはいつもそれを面白くないなぁと思っていて、もっと変なことをしろとか、先生に怒られるようなことをしろと言うんだけど、やはりなかなか分かってもらえない。
かと言ってのび太を目指せとも、ジャイアンやスネ夫やしずかちゃんを目指せとも言い難い。結局誰かと同じになんてならないんだから。
子育てって本当に難しい。
でもまぁ、君は素敵な君になってくれたらそれでいいんだよ。
がんばれ。