苺男をもう一度
彼女はいちごが大好きでした。
彼女はいちごを愛していました。
その愛がとっても大きかったので、ついには彼女はいちごの栽培を始めました。
ビニールハウスでいちご畑を作りました。
最初は1棟。
そしてどんどん増やします。
彼女は田舎の一軒家に、いちご畑を作りました。
近くに人は住んでおらず、一人でいちごを作りました。
ある時、そのいちご畑に血だらけでたおれている男を見つけました。
男の顔は真っ赤でした。
ポール・マッカートニーのようでした。
その男はテレビで観たことがあります。
指名手配中の逃亡犯でした。
男は死にました。
彼女はしばらくその男の顔を眺めていました。
なぜならその男の顔がとてもハンサムで、うっとりとするようなものだったからです。
血に染まった真っ赤な顔が、まるでいちごのようでおいしそうだと思いました。
ああ、食べてしまいたい。
もったえない。
彼女はそう思ったのです。
彼女は男をいちご畑に埋めました。
ハンサムな男の埋まっているいちご畑。
誰にも知られずに、この男を一人じめ。
そして甘いいちごを育てるのです。
ああ、なんて幸せなのでしょう、と彼女は思いました。
ある時、そのいちご畑に奇妙ないちごができました。
そのいちごは大きくて、人の顔をしていました。
そのいちごはどんどん大きくなりました。
そしてある時、そのいちごは土の中からムックリと立ち上がったのです。
それは、あの男でした。
ポール・マッカートニーでした。
いちごの顔をした、あの男でした。
顔だけはいちごですが、身体はあの男そのままでした。
いちごへの愛と、男への愛が、苺男を誕生させたのです。
彼女は苺が好きでした。
そしてその男が好きでした。
だから食べました。
苺男の顔を食べました。
それはとってもおいしい苺の味でした。
残酷ですか?
苺男の顔を食べるのは残酷ですか?
じゃあ、アンパンマンの顔を食べてはダメなのですか?
アンパンマンの顔、食べますよね?
アンパンマンの顔は、ジャムおじさんに新しく作ってもらえばいいのです。
だったら苺男の顔もまた作ればいいのです。
彼女は顔の無くなった苺男の体をふたたび苺畑に埋めました。
するとどうでしょう?
しばらくすると、また苺男が生まれました。
彼女はうれしくてうれしくてたまりませんでした。
これが、苺愛です。
苺を愛した彼女のために、苺男は生まれたのです。
彼女はまた苺男の顔を食べてしまおうと思いました。
ですが、ふと思いました。
もったいない。
顔だけじゃなくて、体もいただきたい。
彼女は苺男の顔を食べるのは我慢して、体をいただきました。
彼女は苺男に抱かれて、何度もいきました。
ああ、なんて気持ちがいいのでしょう?
私はなんて幸せなのでしょう?
しかしながら、彼女が愛しているのは苺です。
男よりも苺なのです。
彼女は我慢ができずに、苺男の顔を食べました。
ああ、やっぱり苺が大好き!
そしてまた、苺男の体を苺畑に埋めました。
彼女は願います。
苺男をもう一度。
いつか~、君といった~♪
男~が~、また来る~♪
おわり。
もしも僕の小説が気に入ってくれたのなら、サポートをお願いします。 更なる創作へのエネルギーとさせていただきます。