【読切小説】寄り添う春、めぐる頁【22623文字】
新幹線が小気味よい音を立てて停車する。
窓の外には、まだ眠りから覚めきらない街並みが広がっている。
灰色のビルの合間から、わずかに覗く朝焼けの色は、どこか儚げで切ない。
車内のアナウンスが流れ、少なかった乗客たちが眠い目をこ擦りながら降車の準備を始める。
座席に残る温もりが、ここでの長い旅の名残を伝えていた。
「着いたか……」
読みかけていた文庫本にゆっくり栞を挟むと、それをジャケットの内側へと仕舞った。
九州へ来るのは実は初めてだ。
東京に住む俺からすると、この地はどこか