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奈良クラブ、JFL優勝、J3昇格をいかにして成し遂げたのか。3年間の数字で見てみる。
みなさん、大晦日いかがお過ごしでしょうか。
僕は仕事に追われ、結局大掃除もできず、31日なのに会社に来てnoteを書いています。11月ぐらいから書きたい書きたいと思いつつ、年の瀬まで来てしまいました。笑
さて、僕が奈良クラブの代表取締役社長に正式に就任した2020年2月1日から、丸3年が経とうとしています。将来、何年か先にクラブの歴史を振り返ったときに、経営視点からのオープンな記録が何も残ってないとなるとクラブの歴史を紐解けなくなるので、気合で書いてみたいと思います。
1.3年間のプラン
僕が代表取締役に就任した2020年2月以降数カ月は、僕のnoteにも記載していますが、本当に厳しい状況でした。
僕が奈良クラブに来た当初、サポーター、パートナーをはじめ、奈良クラブに対してのクレーム、不信感の高まりはかなりのものでした。ただ、その中には誤解があったり、噂話だったり、単にコミュニケーションの不足から起こっている問題も多々あると感じました。そのため、クラブに対してのクレーム、要望を含め、直接クラブに連絡にいただいた方々一人一人と直接連絡をとり、対話をする方法をとることにしました。奈良クラブに深い関心のある方全部と話をしても、せいぜい500人~1000人ぐらいであるとしたら、だったら全員と対話するぐらいの気持ちでした。
そのため、1年目から上を目指すのではなく、1年目:信頼回復期 2年目:構想準備期 3年目:構想実現期の3年計画で進めていくと決めました。
1. 信頼回復期
行動基準として、対話重視、昔から奈良クラブを支えてくれている人を大切にする、という方針を取りました。
経営については、まずは倒産しないように資金繰りに注力するというスタンスを取りました。特に以下ご覧のとおり、スポンサー収入が250%減額となり、営業売上が1.3億に対して、営業損益で当初-8000万予測という状況だったため、とにかくまずは資金繰り、経費削減という状況でした。本来であれば、どこからも融資を受けることができない状況でしたが、コロナ禍ということもあり、1億円の融資を受けられ、なんとか倒産を回避という状況でした。経費削減についても、あらゆる経費を見直しましたが、2020年2月時にはすでに監督、選手含め予算がクローズしてしまっており、2019年時よりも、15%弱も強化費を上積みしてしまっているというなかなかシビアな状況でした。この時期コロナ禍もあり、ほとんど動けない状況ではありましたが、行動制限が緩和されたときなどには自治体、サポーター、企業のみなさんと会話する時間を極力とるという動きをしていました。
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2.構想準備期
2年目に入ると、構想準備期ということで、クラブのボトルネック(自前の練習場ではないため、何もものを置けない、育成部門とトップとの交流ができない、フロントスタッフの移動が多い、etc)となっていた練習場整備のための土地探し、育成からトップまで同じアイデンティティーで戦うためのメソッド部門設立(サッカーサービス社が開発したエコノメソッドとの契約締結、ダリオコーチ来日)、そしてサッカーサービス社からフリアン監督の招聘を皮切りに奈良クラブのアイデンティティを作っていきつつ、奈良クラブのアイデンティティにあった選手の獲得を目指していくという、種まきの1年としました。
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業績的には、以下のようにスポンサー収入をはじめ、全項目を改善しつつ、選手には申し訳なかったですが、強化費を25%削減し、個の集合体ではなく、集団として戦えるチームに変革を開始しました。クラブとしては、J3にあがるには売上高1.8億は必要であると考えていたため、J3昇格ではなく、中上位を目標に戦いました。結果的には、以下のように予算減にもかかわらず、チームとしては上昇することができました。
2019年 : 8勝12敗10分(14位)(強化費8580万)
2020年:5勝 7敗 3分(13位)(強化費9828万)
2021年:10勝9敗13分(10位)(強化費7311万)
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また、夏には、大和ハウス工業様とトップパートナー契約を締結、新拠点についても、奈良学園大学のグラウンドを確保が完了し、2022年の構想実現期に向けて視界良好という流れができてきていました。
3.構想実現期
3年目に入り、2021年11月に行ったフリアン監督のミーティングでは、2022年は優勝するためのチーム作りを行おうということで、優勝するためには、最低限売上1.8億-1.9億、強化費9000-9500万が必要で、その数字を軸にチーム作りを開始しました。
また、J3昇格基準をクリアするための、年間合計観客数3万人、ロートフィールドへの1500ルクス以上の照明設置、さらには業績の上でも債務超過を回避などなど、シーズン開幕前には本当に高い壁に見えました。正直、何回もこれは無理かなあ、、、と思うことはありました。ただ、目標に向かってみんなで戦うことは本当に楽しくてやりがいがありました。集客については最後の5節が勝負とわかってはいましたが、それまでに順位要件が首位に肉薄するレベルになっていないと厳しいとは思っていました。そのため、大きく煽るのは首位に立つまで控え、首位になったタイミングでなりふり構わぬお願い作戦に転じました。
奈良からJクラブが誕生するかもしれません。夢が叶うかもしれません。
— 濵田満🦌奈良クラブ (@hamada_naraclub) August 23, 2022
ただ、あとホーム5試合で19578人の集客が必要です。
企業、自治体、サッカー界、学校など、あらゆるツテを頼り動員に動いて来ましたが、力不足もあり、達成には程遠い状況です。
皆さんの力を貸してください。🙇♂️#奈良クラブ
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2022シーズン集客数
実は、このタイミングでつぶやいたのにはわけがありまして、1つは照明の問題が解決し、J3ライセンスが確実に取れることになったこと、昇格の順位にいたこと、鈴鹿戦の観客数を6-8000人程度と想定していたこと、そのため、このタイミングでなければ手遅れになると判断し、がんがん煽る作戦にでたのです。
また、広報のがんばりで関西のメディアをはじめ、メディア露出が格段に増えたのもこの時期でした。たぶん、実際はもっと多いんですが、取り急ぎ11月中旬ぐらいまでにまとめた数字です。
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こういった状況もあって、スポンサー売上、チケット売上、グッズ売上などが上振れし、2022年度の着地予想は以下のようになりました。その分PR関連の投資をかなりしたため、想定以上に赤字が膨らんでしまいました。
シーズン前は、売上高1.8億想定でしたが、売上は3000万の上振れ、一方経費も同様に膨らみ債務超過ギリギリの低空飛行状態です。(2022年9月期に1650万を第三者割当増資で調達済)
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僕としては、J3昇格と新拠点「ナラディーア」のお披露目のタイミングを合わせるということを2021年時からもくろんでいたため、最高の形での着地となりましたが、ここから奈良クラブ第二章の始まりです。
次回、J3、「奈良クラブかく戦う」という内容でJ3を数字で見ようと思います。