わがままを叶える経営の限界と、人を活かす本当の秘訣
こんにちは、「笑顔工学」の専門家、木村光範です。
笑顔工学って何??という方は、ぜひ自己紹介をご覧ください!
「わがままを叶える」と「人を活かす」は大違い
私が経営していた会社では、かつて「社員がやりたいことを自由にやることができれば、最高のエンジニアのパラダイスができて、企業も永続する」と信じていました。社員がやりたいことや要望に応える「わがままを叶えてあげる」ことが、人を活かすことだと勘違いしていたのです。
しかしながら、会社として目指すべきビジョンやミッションの共有が欠けていたので、当然のように会社はバラバラになっていき、結果として、社員一人ひとりの能力や特性を十分に引き出すこともできなくなりました。
やりたいことが実現されても、それが会社の成長や目的につながらないことが多く、結局、会社は存続することができませんでした。
当たり前のことなのかもしれませんが、当時の私が気づかなかった大切なこと、それは、「人を活かす」ということは単に「わがままを叶える」ことではない、ということです。
本当に人を活かすためには、個々の才能を企業の目的とリンクさせ、社員と会社が共に成長できる仕組みをつくる必要があるのです。
中小企業家同友会の「人を活かす経営」
私が所属している団体の1つである「中小企業家同友会」では、経営者と社員の関係を再定義した指針として、「中小企業における労使関係の見解」、通称「労使見解」を発表しています。この労使見解は1975年に公表されたもので、実は私の生まれ年でもあります。その意味でも個人的にとても縁を感じています。
この「労使見解」では、「社員は単なる労働力ではなく、最も信頼できる経営のパートナー」と定義されています。この考え方は、経営者と社員が対等な立場でお互いを認め合い、共に育ち合う関係を築くことを求めています。これは、「人を活かす経営」の核心を鋭く突いたメッセージだと感じています。
労使見解の中心的な考え方を、以下の3つにまとめてみました。
社員は「会社の宝」
経営者にとって社員は最も大切な存在であり、ただの労働力ではありません。社員一人ひとりの成長が、会社全体の発展に直結するという視点を持つことが求められています。経営者は「黒子」
経営者は前面に立つ存在ではなく、むしろ裏方として社員の成長を支える役割を果たします。この「黒子」という表現は非常に象徴的で、経営者が目立つことよりも社員を輝かせることに力を注ぐべきだという考え方を示しています。「相思相愛」の経営
経営者と社員が共に学び、成長し合う「相思相愛」の関係を築くことが重要です。この相思相愛の経営は、経営者と社員の信頼関係を深め、企業全体の一体感を生み出す基盤となります。
私は東京中小企業家同友会の「経営指針成文化セミナー」に参加した際、この労使見解の意義を深く学びました。経営者が社員とどのように向き合うべきか、また社員が会社とどう関わるべきかを考える中で、労使見解が目指す「対等なパートナーシップ」という考え方がとても新鮮に感じられました。
特に印象的だったのは、「社員の生活向上と企業の永続は矛盾しない」という言葉です。これは、「経営者の利益」や「短期的な成果」だけを追求するのではなく、社員の成長と幸せを同時に実現することで、企業全体の成長が持続可能になるという考え方です。
私はこの学びを通じて、自分の過去の経営経験を振り返り、「社員を活かすために何が足りなかったのか」を再認識しました。
労使見解の考え方に基づくと、「人を活かす経営」と「社員のわがままを叶える経営」には本質的な違いがあります。
まず、「人を活かす経営」とは、会社と社員が共通の目的に向かって共に成長することを重視する経営手法です。これは労使見解が示す「相思相愛」の関係性そのものであり、経営者は「黒子」として社員の成長をサポートします。しかし、それは単に社員の要望を無条件に叶えることではありません。むしろ、会社のビジョンやミッションと社員の才能や意欲を結びつけ、双方がウィンウィンの関係になることを目指します。
一方、「社員のわがままを叶える経営」は、一見すると社員思いに見えますが、実際には会社と社員の関係性を浅くしてしまう危険性があります。社員の短期的な欲求を満たすことに終始し、会社全体の方向性や長期的な成長との整合性を欠いてしまうのです。そして、誰かのわがままは、他の人にとって迷惑になることもあり、どんどんバラバラになっていきます。結果として、組織としての一体感が失われ、持続的な成長が難しくなります。
労使見解が強調する「社員は会社の宝」という考え方は、社員の価値を認めると同時に、その価値を会社の成長に結びつける責任を経営者に課しています。つまり、社員の才能や意欲を会社の目的に沿って活かすことが求められているのです。
また、「社員の生活向上と企業の永続は矛盾しない」という労使見解の言葉は、単に社員の要望を叶えるだけでは不十分であることを示しています。社員の生活向上は、会社の永続的な成長があってこそ実現できるものです。そのため、社員の成長と会社の成長を同時に追求する「人を活かす経営」が不可欠なのです。
結論として、「人を活かす経営」は、社員と会社が共に成長するための戦略的なアプローチであり、単なる「わがまま」の実現とは本質的に異なります。それは、労使見解が示す「対等なパートナーシップ」の理念に基づき、社員の潜在能力を最大限に引き出しつつ、会社全体の発展に結びつける高度なバランス感覚を要する経営手法なのです。
「本当に人を活かす経営」とは
私の失敗は、社員の声を聞くことと「人を活かすこと」を履き違えていたことにあります。「わがままを叶える」だけでは、個々の成長や企業の発展につながらないのです。
しかし、この経験から、「人を活かす経営」には以下の3つのポイントが必要だと感じました。
目的とビジョンの共有
企業の方向性を明確にし、それに共感する社員を増やすこと。個性と役割の調和
社員一人ひとりの個性を尊重しながらも、組織の中で果たすべき役割を明確にすること。成長を促す環境の提供
自由な発想を奨励しつつ、適切な教育とフィードバックを行い、成長を支援する仕組みを整えること。
おわりに
「人を活かす経営」は、決して簡単なことではありません。しかし、社員一人ひとりの可能性を信じ、成長を支援することで、企業と社員が共に発展する未来を築くことができます。
失敗から学んだ私だからこそ、この考えを伝える責任があると思っています。「人を活かす経営」を実践し、笑顔あふれる社会を一緒に作っていきましょう!
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