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「モチベーションは自分の責任」に違和感を覚えた時の話

こんにちは。ヨシミツダです。

今日は、あるセミナーで司会の人が「モチベーションを人にどうにかしてもらおうとしているのは甘えだと思います。モチベーションを高めることは自分の責任です。」という話を聞いて違和感を覚えた時の話です。

実は約10年程前に当時の職場の先輩に全く同じことを言われたことがあり、当時は素直にそうだよなと思っていました。しかし、その後いろいろ実践、体験していく中で、ちょっと違うかなと感じたことがあったのでその気持ちを共有したいと思います。

フロー理論に出会った時の衝撃

昔は楽しくて仕方がなかった仕事が、慣れてくるにつれてだんだんつまらなくなる。社会人になり3年目くらいに陥りがちな症状ですが、私も多くの人と同じようにこの症状に悩んでいました。
そんなとき、ミハイ・チクセントミハイのフロー理論という考えに出会い、こういうことだったのかという衝撃を受けると同時に、これで今の状態を解消できるということに喜びを覚えたことを記憶しています。

フローという状態は、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような精神的な状態のことを指します。(Wikipediaより)

そしてこのフロー状態は、自分の能力に対してやや難度の高い目標を立てた時に発生します。
目標設定が高すぎると萎縮や恐怖に支配されてしまったり、逆に目標設定が低すぎると惰性が支配的となりフローに入りにくくなります。

このフロー状態に入れば毎日がわくわくしてモチベーションも常に高い状態に保たれるはずと喜んでいました。つまりは目標設定に気をつければいいのだと。まるで世界の秘密を一つ明らかにしたかのように、高揚していました。

現実にある落とし穴

劇的に状況が改善されるかと思いましたが、現実はそう簡単に変わりませんでした。
問題は、特に仕事においてタスクを要請するのは他者であるという点です。

30代になりマネジメントをするようになり、マネジメントの基礎理論の中でエドウィン・ロックという人が提唱した目標設定理論というものに出会います。

エドウィン・ロックは意識的かつ適切に設定された目標が人を動機づけると説き、これらを大きく4つの要素に分解・定義しました。

①目標の困難度(困難な目標が高い成果を生む、ただし達成の可能性がある高すぎない目標という条件つきである) 
②目標の具体性(数値目標や期間などの具体的なもの) 
③目標の受容(一方的な指示ではなく個人が主体的に設定する) 
④フィードバック(目標達成過程で成果の水準の情報を開示する)

この①の項目など、まさにフロー理論と共通する考え方です。
マネジメントにこういった考え方があるということは、各自の仕事の設計において相互理解のもと上記の目標設定をすることが必要になります。

しかし、現実はどうか?
個人の目標、能力と仕事上の目標をアライメントするのは容易ではありません。
そもそも、個人のことを的確に理解することは難しいです。例えば、身近な例として、家族にクリスマスプレゼントを購入するときに、さんざん迷って喜んでもらえるかを考えて購入したのに、センスがないと酷評されたことはないでしょうか。
いつも一緒にいる家族ですら、そんなことが起きるのに、限られた時間しか共有していない人間一人一人と上記の目標設定をジャストフィットさせることは、それ自体が難易度の高いオペレーションです。また、労働者に要請する仕事そのものにも制約があり、拡張が難しい仕事もあります。
例えば、(現実にはないと思いますが)ホチキスを紙にとめる仕事しかない場合、目標を拡張することは容易ではありません。

また、いろんなマネージャーの近くで仕事をすればわかるようになると思いますが、彼らも人間です。優れた人もいれば、会社側の都合のみで仕事を強要することが正しいやり方だと無意識的にふるまっていることも多いです。

目標設定をする下地も重要です。
教会でレンガを積む人や、石垣をつむ石工の話を聞いたことはないでしょうか。まるで、個人の仕事に対する姿勢の事例のように紹介されることが多いのですが、あれはマネジメントとして仕事の届く先が見通せる、もしくは気がつけるかというストラクチャーが組織にあるかということを問われているのだと思います。仕事に対するフィードバックがあるか、仕事の価値や貢献が見通しやすい組織のストラクチャーになっているかもモチベーションに関与します。そもそもブラックな環境でモチベーションを上げることはかなり困難です。

以上のことより、他人主体でオーガナイズする会社の仕事というストラクチャーのもとでは個人をフロー状態に持っていくことは難しいと感じたのが私の感想です。モチベーションを高めるには仕事選択、設計を意図的に実行できる環境、能力が必要になります。

個人の側面でみた発動条件

心理学の分野では思考には速い思考と遅い思考があるという考え方があり、それぞれシステム1とシステム2と呼ばれます。ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」という本で、有名になった考え方です。

考えなくてもわかる→速い思考システム1
人は無意識にものごとを判断することができます。

考えないとわからない→遅いシステム2
人は論理的に考え、気が散っているとうまく働きません。

ここからは私の持論ですが、適度な目標に挑んでいる状態はシステム1のみで動いているときではなく、一定以上の割合でシステム2を含む状態だと考えています。また、思考、動きをゆっくりにすることによる効能もソマティクスの分野で確認されています。

極端なことをいうと、毎日、毎時を一期一会の状態で過ごすとモチベーションを高めやすくなると思っています。

しかし、ここでまた矛盾が生じます。
会社がもとめる成果の一つはスピードです。
スピードのない仕事は、無価値とまで言われることもあります。
しかし、エブリタイム一期一会状態は、恐ろしくスピードのでない状態なのです。学習は非効率
なのです。

この仕組みが理解できないと、会社の論理でただひたすら人を速いスピードで動かすことしか考えていない人と対面した時に悩みます。

一期一会状態でモチベーションを高めることは、仕事の中で常に実行することは困難です。

ではどうするか。

セーフティネットのある状態で、プロジェクトに関わるというやり方があります。
仕事以外のコミュニティで、失敗のプレッシャー、インパクトが小さい中でチャレンジしてみる。
経済的に自立した形で、副業としてチャレンジしてみる。こういった機会を増やすことでライフタイムにおけるモチベーションを高められると感じています。

あとは難易度が高いのですが、仕事のデザインのイニシアチブを完全に自分にシフトする。
長所で仕事をするなどです。
こういった仕込みをすることでも、モチベーションを高めることができます。

なので、モチベーションが高くならないのは自分のせいではありませんが、何がそうさせるのか認識してモチベーションを高める仕組みを日常に導入していきましょう。

それではまた。

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