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句集を鑑賞しました! 句集「隣の駅が見える駅」(塩見恵介) 朔出版

作者の塩見恵介さんとは、柿衞文庫俳句ラボで出会いをいただきました。
俳句を始めた頃に結社にも所属せずにフリーで俳句を勉強できる場所を探していてヒットしたのが俳句ラボでした。
塩見さんは、独特な感性で楽しい俳句が素敵です。俳句を科学的に分析されている姿勢がとても素晴らしいです。

チューリップ兄より優し兄の友

(季語:チューリップ、春)
チューリップって若い女性を連想します。お兄ちゃんの部屋には友達が遊びに来ているのでしょうね。
そのお兄ちゃんの友達に好意を寄せている雰囲気がとても愛らしいです。

菜の花の揺れたるような昼休み

(季語:菜の花、春)
小学生時代の昼休み、中学生時代の昼休み、大学生(専門学校)時代の昼休み、新入社員時代の昼休み、社会に小慣れて来てからの昼休み。
僕の中の昼休みってこんな感じで分けられるイメージです。
掲句の昼休みは、大学生(専門学校)時代の昼休みを連想します。こう連想させるのも菜の花っていう季語の力ですよね。
比喩になっているので実際には菜の花は無いのかもしれませんが、俳句からはキャンパスに菜の花が揺れていてポカポカしている雰囲気が心地よく伝わってきます。
ほのぼのとした温かい昼休みです。

躑躅咲く今日のコンパに今日呼ばれ

(季語:躑躅、春)
なんか既視感がある作品です笑
一人ドタキャンで数合わせで呼ばれた寂しさと、コンパやっていう楽しさとが複雑に混じり合います。
真っ赤な躑躅が満開の中を駅に向かって歩いて行きます。
躑躅を見ながら、今日のコンパの成果に胸を高鳴らせている作者が浮かんできます笑

花は葉にカレーおかわりまだあるよ

(季語:花は葉に、夏)
俳句の世界で”花”といえば”桜”のことを指します。俳句してなかったら知らんかったけど。
花は葉になったということなので、葉桜のことを指します。満開の桜が葉っぱだけになってしまった余韻を味わう感じですね。
時期的には、入学式が終わって4月の中旬から下旬くらいでしょうか。
”カレーおかわりまだあるよ!”というおばちゃんの声(勝手におばちゃんを想像してます。作り手の手を離れると後は読み手が勝手に想像して良いところも俳句の醍醐味ですね)
室外をイメージするか室内をイメージするか…。鑑賞する人によって分かれるところかと思いますが、私は、室内をイメージしました。
入学式が終わって、午前中の短縮授業も終わり、午後の授業も始まりました。それに伴い給食が始まった頃。
今日の給食は、カレー!
担任の先生が、子どもらに「おかわりまだあるよー!」って声をかけている雰囲気です。外では、葉桜が子どもの成長を見守ってくれています。

大声の友も大声風薫る

(季語:風薫る、夏)
これは、笑いましたw
大声の友達も大声やったという事実を12音にして季語の風薫るを組み合わせただけなのですが、情景が浮かんできますよね。
”大声の友も大声”だけでは、何かうるさくてイラッとする感じなのですが、季語の風薫るで初夏の爽やかな雰囲気を感じさせてくれて、大声の不快感が爽やかな風でかき消されます。
季語の力が感じられて、何か、ええ俳句やなあって思います。

目の前のことを大事に冷奴

(季語:冷奴、夏)
昼間に仕事で失敗してもうたんかな…。
家に帰ってからビールと冷奴で反省している作者が浮かんできます。
目の前のことが大事やぞって、自分に言い聞かせてるんでしょうか笑

秋晴れのバでハウリングするマイク

(季語:秋晴れ、秋)
マイクがハウリングすると焦りますよね。
運動会での校長先生の挨拶が浮かんできます。
ハウリングした”バ”の音が秋晴れの澄んだ空気をアテもなく彷徨っています。

たんぽぽを歌手がマイクをもつように

(季語:たんぽぽ、春)
小学生低学年くらいの女の子が真っ先に浮かんできました。
アイドルを夢見てたんぽぽをマイクの様に持っている春の一日がとても良い感じW

寄せ鍋や鴨居に頭ぶつけるな

(季語:寄せ鍋、冬)
忘年会の一幕ですね!頭ぶつけるなと言っている人は、きっと自分はぶつけてるんでしょうね笑
後から来た人たちに注意している。その横では、寄せ鍋の準備が始まっていい香りが漂っています。

燕来る隣の駅が見える駅

(季語:燕来る、春)
この句集の題名になっている一句。
作者ご出身地の阪神電車の場面でしょうね。阪神電車って駅と駅の間が短くてすぐ見えるんですよね。
春の駅って出会いや別れや様々なことを連想させてくれます。駅と燕っていい雰囲気です。
新入社員が夢や希望を持って梅田に向けての出勤していく姿が浮かびます。それを燕が巣から見守っている感じW
とっても温かいですね。


その他、好きな俳句です。
花筏別れて別の花筏
空ばかり眺めアスパラガスの先
豆ご飯子の友のこと子に褒めて
はつなつやひと目で決まる欲しい服
ポケットにいつの胃薬夏の月
手で顔をあおぎ鰻重待つ二人
噴水の前で止まっている家族
星涼し魚食べるの上手な子
ヨット往く波に付箋を貼るように
じいちゃんのやいとのせなか遠花火
澄む秋を三回混ぜて引く御籤
屋根のない球場が好き雁渡る
抱く子にも一粒持たせ鬼は外

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