紅葉の賀
粕汁を配る杜氏の笑顔かな
冬めきて茜を帯ぶる鳰の海
帰りくる漁船に冬の月丸し
熱燗や女将の孫と語らひて
母の手を払ひて蜻蛉追ふ子かな
匿名の封書受け取る秋の暮
寄り添ひて二十五年の紅葉の賀
俳句結社雲の峰の結社誌に掲載された俳句です。
以下の俳句を鑑賞していただきました。
俳句は、人に鑑賞していただいてはじめて、その俳句にいのちが吹き込まれるように感じます。有難いです。
【通勤の車中を秋の蚊と過ごす 光本弥観】
通勤の車の中に秋の蚊がまぎれ込みました。うるさく、ちょっと邪魔くさい感じですね。
でも、この句からは、その蚊をうるさがっている様子が感じられません。むしろ、通勤のひと時の連れができたように思っている作者のおおらかさが伝わってきます。
もう余命も短い秋の蚊へのいたわりさえ感じます。「いのち」あるものへの作者の優しさが滲み出ているような気がします。