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句集を鑑賞しましたシリーズ! 「ブロンズ兎」(藤井なお子句集、ふらんす堂)

茨木市俳句協会にてお世話になっている藤井なお子さんの句集を鑑賞させていただきました。
(略歴をブロンズ兎より抜粋)
「白露」「たまき」「船団」現代俳句協会会員、茨木市俳句協会事務局

すっと意味が入っていくる句と私の理解が全く及ばない句とあるのですが、私にはない感性をお持ちであり、とても感性をくすぐられる句が多いです。

囀やときに曲線ときに点

囀を曲線や点として捉えている作者。私の発想にはなかった感覚なので、どのような感じ方なのかなあって不思議に思いました。
こんど、囀を聴くときは意識してみよっと。

青空に輪郭バレンタインの日

空って大きく広がっている感覚ですが、バレンタインの日の今日は輪郭があるように感じる。想いを寄せる方の輪郭のように感じたのでしょうか。

半分に切つてますます春キャベツ

半分に切ることによって、春キャベツはより一層春キャベツと化したと捉える作者。
切ることで春キャベツの水々しい香りが漂ってきます。

緑陰へ直線裁ちのワンピース

洋服は基本的に直線に裁断することはないと思うので、直線裁ちと言われると和服を想像してしまうのですが・・・、ワンピースなんやあと!
裏切られた感じがします。
腰のあたりは、ベルトでキュッとしめているのでしょうか、それともそのままなのでしょうか。読み手としては気になるところですが、作者には関係ないのでしょうね。お気に入りの直線裁ちのワンピースで夏の木々が生い茂る緑陰の中へ入っていく高揚感が伝わってきます。

空蝉のほかに良いものなどなくて

私自身、空蝉がとても好きなんです。空蝉から儚さと力強さと潔さを感じます。あの縦にスパッと割れたフォルムも美しいなあって思います。
空蝉さえあれば良い!他に良いものはない!という作者に共感します。

腕時計はめながら出る薔薇の家

庭には薔薇が生い茂る立派な豪邸。少し焦りながら腕時計をはめつつ玄関を出て行く。少し危険な情事を想像してしましました。

割箸を割る豊年の音かしら

実りのよかった豊作というものにもし音があるとしたら、それは割箸を割るおとなのかもしれないという作者の発見。
農作業を中断し、昼ごはんのお弁当を田んぼの隅っこで皆でワイワイ食べている雰囲気が伝わってきます。今年は豊作やなあと皆で語り合いながらの田舎のほのぼのとした感じがとても良いですね。

啓蟄や仰向けに置くランドセル

いつもは、うつ伏せに置かれているのでしょうか。啓蟄の今日は仰向けに向けられている子どものランドセル。
ランドセルからは、何か良からぬものの雰囲気を感じ取って怪しんでいる作者の心情が伝わってきます。

椅子の向き変へても同じ青嵐

正面から受けようが横から受けようがどうしても全く変わらない青嵐。
作者のあきらめ感と青嵐を受け入れる感が伝わってきます。

クレパスに肌色のなし小夜時雨

手持ちのクレパスには肌色がない。せっかく子どもと一緒にお絵描きを楽しんでいるのに・・・。肌色があったらもっと上手くかけるのにという雰囲気を感じます。季語の小夜時雨がそう感じさせるのでしょうか。
冬の時雨の晩に、親と子どもでお絵描きしている雰囲気が良いですね。
ほんで、クレパスに肌色ってあるんかなあ。


その他に共感した俳句です。

貝殻の釦の光る梅見かな

形あるものに余命や四葩咲く

朝風呂の匂ひ泰山木の花

湖の底に階段バードデー

万葉の池ひりひりと糸蜻蛉

電柱に番号のあり原爆忌

宿題はいつも理科から扇風機

月光へ背鰭さしだす鰍かな

花野ではDJ風の喋り方


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