スパーズ戦から一夜明けて
VARへの信用を失墜させる致命的なミス
僕はVARという仕組み自体には大変意義を感じている。
ファンや選手、監督がその瞬間その瞬間の激昂で誤審と罵倒することに対する最大のカウンターであり、ピッチにいる審判団の後ろ盾になれる、彼らが裁定を下すことへの恐れを軽くすることができる、彼らの威厳を守ることもできる、そういったものだと信じているから。
誰の発言、表現したものか引用を示せず申し訳ないが、VARは審判たちにとっての命綱である、という表現が好きだ。
平時にはありがたみは別に感じず、時には作業の邪魔ですらあるが、緊急時にそれがあるかないかで全く違うし、それがあるからチャレンジできるような側面もある、まさにこの仕組みの意義を完ぺきに表現していると思う。
全世界でGLTををはじめとしたテクノロジーを導入することは難しく、中継映像を使うという現実的な落としどころで、やれるかぎりの最善を図っているというその姿勢も好きだ。
昨晩、スパーズ戦のVARチームがやらかしたとされるミスは、ピッチ上の判断を誤認し、ディアスはオンサイドでありゴールであるという確認結果の伝達ミスなのでは?と推測されている。まだ正式な報告を待つ必要があれど、少なくとも誤審であったことが認められている。
好きなチームが不当な判定を被ったと言えばそれまでだが、それと同じく、命綱の役割を負う人間の仕事がこれか??という点に憤る。
先日のマイク・ディーンの告白といい、これといい、これほど意義ある仕組みが運用する人間の不甲斐なさで意味がないものとされるのはとにかくやるせない。
VARの運用がこれほどまでに上手くいっていないのは欧州主要リーグを見渡してもプレミアリーグだけであり、もう導入から何年経つんだ?という気持ちが拭えない。数々の大ポカにより、イングランドではVARの意義は今、ほとんど理解を得られていないと思う。
かつてピッチ上で威厳を放ち、賛否両論はあれど、誰が見ても英国いちのレフェリーには違いなかったハワード・ウェブが、責任者として詫びているのを見ると、きっと彼ももどかしいだろうなという同情が湧いてしまうくらい、ここ1年半のVARにまつわるミスはとにかくひどい。
とはいえ、誰かをつるし上げろとか、あいつを二度とかかわらせるなといった感情ありきの処罰とかではなく、例えば航空管制のような無線のみでのコミュニケーションに際するノウハウを持ち込むなど、この出来事からの前進を望む。
それがクロップが誤審の詫びに対して無意味と切って捨てたことに表れているように、試合に関わる人が本当に望んでいることだと思う。
ガクポの負傷がとにかく心配
僕はリバプールのファンであり、PSVのファンだ。
だから、コーディー・ガクポは、チームでいちばん好きな選手とかそういう次元で形容できる選手ではない。
彼はPSVの誇れる息子のひとりであり、加えてメンフィスやほかの愛されてきた選手たちとは異なる、生粋の地元っ子の生え抜き、リバプールにとってのTAAやジェラードなのだ。
そんな成功を願ってやまない大切な選手が自分のもう一つの大切なチームのために毎試合全力でプレーしているだけでとてもうれしい。
今季のここまでは、彼の長所よりも、彼の万能さをチーム事情によりその時々で頼られているだけで、少し歯がゆい。
いまのリバプールのFW陣に割って入るどころかスタメンに近い立場でいるだけでも凄いことだと理解しつつ、どこかで彼の能力に蓋をされているようなCF起用はもどかしい。
器用に役割をこなすのも素晴らしいことだけど、左WGで2人をちぎり、右足からファーサイドの角に鋭いシュートを撃ち込む彼が見れないことへそろそろ渇きを覚えてきた。
だから、どうかACLの断裂だけは避けてほしい。
かつてのセバスティアン・コアテスが勝負の3年目に挑めなくなった、事実上、リバプールでの挑戦にとどめを刺したあの怪我がよぎる。あのときも、ただの接触くらいだったのに、一夜明けたらシーズンアウトの診断だった。
それからも、ダニー・イングス、ジョー・ゴメス、Ox、ファンダイク。素晴らしく事が運んでいるときに限ってこの忌々しい悪夢は選手の膝に鎌を振るい、奪い取っていく。
怪我で人間的な成長を得られた、強くなれたと彼らはそろって言い、本当にそうなんだろうと思う一方で、わきから見ている僕は、そんなことを言えるような素晴らしい選手たちなら、なおさらそんな目に遭ってほしくなかったと感じ、嘆いてしまう。
いまは、重大なけがでないことを願うばかりで、続報を待つこの不安をnoteに綴って気を紛らわせたいと思う。
<了>